買う側に「人生終わるぞ」一歩前進? 都の児童買春防止動画

「児童買春は犯罪‼ 家族も仕事も一瞬で失うぞ!」。東京都と警視庁が、歌舞伎町に未成年の性を買いに来る大人に向けた警告動画をつくった。「買う人がいなければ被害は起きない」として、「未成年から性を買うことは犯罪」と呼びかけている。売る側ではなく、買う側に着目した内容に評価の声があがる一方で、疑問の声も――。 動画は30秒。プロレスラーの蝶野正洋さんが、スーツ姿の男性に向かい、厳しい表情で「未成年から性を買うことは犯罪だってわかってるよな」と一喝、家族や仕事など「本当に大切なものってのは失ってから気づいても遅せーんだよ」「舐(な)めてるとテメーの人生、終わっちまうぞ」「馬鹿なまねはするんじゃねーぞ」と呼びかける。 東京都都民安全課によると、2024年から「トー横」対策を目的とした啓発動画を6本つくった。25年夏に公開した動画は、若年女性に向けて、にぎやかで楽しそうに見える街にもパパ活や売春など「恐怖や暴力が隠れている」として「この街のリアルを知って欲しい」と訴えるものだ。 今回は、警視庁と連携し、「路上に立つ女性にばかり注目が集まるが、買う人がいなければ被害は起きない」と視点を変え、買う側の大人に警告する内容にしたという。 路上やSNSで性的搾取に遭うなどした若年女性に、5年前から伴走してきた希咲(きさらぎ)未来さんは、これまでは、大人が未成年の性を買う問題も「JKビジネス」や「パパ活」などと呼ばれ、売る側ばかりが問題視されてきたといい、買う側を問題視したことは「一歩前進」と評価する。 ■おじさんはおじさんの言うことしか聞かない? 一方で、買われる側の女性の人権や被害に思いを向けるのではなく、「仕事や家族を失う」と男性に訴える文言や表現に憤りを感じたという。動画では、児童買春すると、買う側が「脅される」「さらされる」「逮捕される」とも呼びかけるが、「実際には、盗撮されてSNSで拡散される被害は女性が多く被っている」。 「その〈男らしさ〉はどこからきたの?」などの著書があり、広告のジェンダー表象に詳しい小林美香さんは、厳しい表情の中高年男性が説教するのは、公共空間の安全や治安維持を呼びかける公共広報の典型だと話す。「おじさんはおじさんの言うことしか聞かない、という社会構造を反映している」といい、仕事や家族を引き合いに出すのは、家父長制の強い社会で、男性がもっとも恐れるのは「立場を失う、集団から疎外されること」を象徴していると見る。 今回の動画では、「買われる側」の被害は描かれない。「加害性を見えにくくさせて、加害者が被害者の痛みに向き合うことを阻んでいるようにも見える」と小林さん。 動画はYouTube(https://www.youtube.com/watch?v=_5ivcEGS7uE)のほか、1月18日まで歌舞伎町タワーの大型ビジョンでも放映されている。(大貫聡子)

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