「路上に血」、国外へ逃れたイラン人が語る過酷なデモ弾圧 タクシーから目にした光景

イラク・スレイマニヤ(CNN) ファルザトさんはもともと、タクシー運転手になるつもりはなかった。 イランの首都テヘランで法学を学んでいた頃、政治に関わった。それが問題の始まりだったと、ファルザトさんはCNNに振り返る。 ファルザトさんはこの9年間で4回逮捕、収監され、直近では「敵対国家との接触」という罪に問われた。禁錮9年に相当する罪だが、ファルザトさんは罪状を否定している。 ファルザトさんの「犯罪歴」を理由に、大学は退学処分を下した。 こうしてファルザトさんはタクシー運転手になり、テヘラン近郊の街カラジの混雑した通りを走るようになった。最近ではカラジは激しい反政府デモの舞台となっている。 「体制の部隊が実弾で人々を撃つ様子を目撃した」と、ファルザトさんは振り返る。「銃弾は主に腹や下腹部、性器に向けて発射された。15分運転する間に、路上に血が流れ、3人の遺体が横たわっているのを目にした」。最も激しい銃撃があったのは今月8日と9日だという。 ファルザトは本名ではない。CNNは16日、イラク北東部スレイマニヤで彼に接触した。ファルザトさんはこのわずか数日前、密航業者に運ばれ、山頂に雪を頂いてそびえる山々を越えてイラクに渡ったばかりだった。報復への懸念から、ファルザトさんは顔を映さず、仮名を使用する条件でCNNの取材に応じた。 物静かな30代半ばファルザトさんは、イランの人口のおよそ1割を占めるクルド系少数民族だ。出身地はイラン東部だが、長年テヘラン周辺で暮らしていた。 イランではインターネットと通信のほぼ完全な遮断が10日近く続き、海外の記者の入国も認められていない。ファルザトさんのような人の証言は、イランで起きていることを理解するうえで極めて重要だ。 ファルザトさんは2022年、マフサ・アミニさん(当時22)が宗教警察の拘束下で死亡したことを受け、イランを揺るがせた抗議デモに参加した。政府による弾圧は当時も過酷だったが、今回の騒乱と比べれば取るに足らないものだったと、ファルザトさんは振り返る。 「2022年には治安部隊は当初、ゴム弾を使用していた。今回は最初からデモ隊に実弾を撃った」「(カラジの)小さな通りでは、治安部隊が少なくとも6人のデモ参加者を殺害した。バルコニーからスローガンを唱えていた若い女性も射殺された」 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが伝えた目撃証言によると、カラジのある病院には1月8日の夜だけで、80人以上の遺体が運び込まれた。 米国を拠点とする人権活動家通信(HRANA)によると、イラン当局がデモ弾圧を開始して以降、全国で3000人近くが殺害されたとされる。CNNはこうした数字を独自に確認できていない。 2022年の時と比べ、今回は怒りや不満の深さの次元が違うとファルザトさんは語る。「デモ参加者は怒りのあまり、体制のシンボルや掲示物をすべて破壊した」といい、モスクさえも標的になった。 ファルザトさんは、トランプ米大統領の「支援が向かっている」との発言については一蹴した。米国は多くのイラン人にとって複雑な過去を持つ超大国で、懐疑的にならざるを得ない。 「最後の最後で、トランプ氏は人々に希望を抱かせた」「だが『イスラム共和国は処刑を停止したと言っている。すべて順調だ』などと主張しており、裏で体制と取引している可能性もある」(ファルザトさん) それでもファルザトさんは、現政権はもはや時間の問題だと見ている。イラン国民は我慢の限界にあり、「体制が押し付けた貧困と悲惨な生活を受け入れ、社会が自滅していくことはない。人々はその段階をはるかに超えている」と語る。 今日のイランの厳しい現実を考えると、抗議運動が近く再燃するのは必至だ。「人々は多くても月200ドル程度しか稼げない。それでは4日分の生活費にもならない」。ファルザトさんはそう語り、「人々は再び街頭に出るだろう。体制の銃弾でそれを止めることはできない」と指摘した。

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