「匿名・流動型犯罪グループ(匿流)」が社会問題化する中、広島県警は不良集団「阿修羅」をグループの一つと位置付けて捜査を進め、10日までにメンバーや関係者計19人を摘発した。交流サイト(SNS)でつながる若者たちが粗暴な行為に走り、暴力団組員と結び付く実態が判明。県警はグループ解散後も引き続き動向を注視する構えだ。 福山市南松永町の木材置き場。9月の傷害致死容疑事件の現場とされる場所には10日、被害者の会社員男性を悼む花束が手向けられていた。一帯は松永湾に面した造船や建設会社の工場が並び、人通りは少ない。 事件は9月1日未明に発生した。県警などによると、阿修羅の幹部だった2人の被告が朝にかけ、男性を拳や自転車のサドルで殴ったり蹴ったりした上、逆さに抱え上げて頭から地面に落としたとされる。夜も暴行を繰り返し、男性は意識不明の重体に。2週間後、命を落とした。 県警によると、阿修羅は2022年9月ごろ、10、20代の男女が集まって活動を始めた。元々は車やバイクで走行する集団で、主にSNSで参加者を募っていたという。「昔なら『半グレ』や準暴力団と捉えていたが、SNSで緩やかにつながり全体像がつかみづらい」と捜査関係者。「捜査が進むうちに組織性が見えてきた」と明かす。 傷害致死に続き、恐喝や強要などの事件が相次ぎ発覚。「こんなグループとは思わなかった」とメンバー43人が県警に次々と脱会届を出したという。県警が阿修羅幹部から受理した手書きの解散届には「犯罪に巻き込んでしまったメンバーに対するケジメ」とつづられていた。 一連の捜査は、阿修羅と暴力団の関係も浮き彫りにした。10代男性数人から現金計41万5千円を脅し取ったとされる事件で、指定暴力団浅野組系の組員2人を逮捕。うち1人は阿修羅の「面倒見」だった。県警は「面倒見代」とみられる金の流れも把握しているといい、暴力団の組織的な関与の有無について今後も捜査するとしている。