「このたびはご心配、ご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。被害者の方には誠心誠意対応させていただきます」 1月19日、警視庁蔵前署の前には大勢の報道陣が集まっていた。午後7時過ぎ、濃紺のネクタイに黒いスーツのボタンを留め、しっかり整えられた眉毛とキリッと引き締まった精悍な顔つきの男が出てきた。歌舞伎俳優の中村鶴松こと清水大希容疑者(30)である。 1月18日未明に、東京都台東区の飲食店のドアを壊したとして、建造物損壊の罪で現行犯逮捕されていた。 「清水容疑者は18日の午前0時50分ごろ、東京都台東区西浅草のケバブ店に入店。同店のトイレを断りなく使用したところ店員に注意され、暴れ出したといいます。その際、出入り口付近の木製ドアを足蹴にして壊した疑いが持たれています。調べに対し『酒に酔っていて覚えていない』と供述したようです」(全国紙社会部記者) 翌朝、清水容疑者の身柄は検察庁へ送られ、18時過ぎにスウェット姿で蔵前署に戻ってきた。その際、髪型は額を隠すように垂れたままで表情もなく、前屈みの状態で建物に入っていった。冒頭のシーンは、それからわずか1時間弱のことだ。 スーツ姿で建物から出てきた清水容疑者は30名以上の報道陣に気がつくと、一瞬、目がキョロキョロと左右に動き、動揺した様子を見せた。それでもすぐに表情を引き締め、謝罪の言葉を口にして頭を下げた。報道陣から「不祥事を認めているのか?」と質問が飛んだが、それに答えることなく、迎えの車に乗り込んだ。 清水容疑者は、いわゆる梨園出身者ではなく、一般家庭出身の歌舞伎役者だ。劇団を経て’05年、10歳の時に十八代目中村勘三郎さん(享年57 )に見出されて部屋子となっている。六代目中村勘九郎(44)、二代目中村七之助(42)に次ぐ“中村屋のホープ”といわれ、東京・歌舞伎座で2月1日に初日を迎える「猿若祭二月大歌舞伎」で初代中村舞鶴を襲名することが発表されていた。 現在、清水容疑者は、浅草公会堂での「新春浅草歌舞伎」に出演中だったが、主宰の松竹は休演を発表。所属事務所は21日、公式サイトで当面の謹慎を発表。それにより襲名は見送りとなった。さらに、事件の概要について、 〈本件について1月18日未明に被害店舗様に泥酔状態の中村鶴松が来店した際に、注文時に本人の勘違いによることでトラブルとなり、店舗出入口の自動ドアを蹴破ったということが事の次第のようです〉 とし、 〈一部報道にありますトイレの貸し借りなどによるトラブルではございません〉 と伝えた。ある梨園関係者は、次のように嘆く。 「酒癖が良くないという話は聞いたことがないので、襲名披露のプレッシャーがあったのかもしれませんね。ただ、あまりにもタイミングが悪すぎます。’05年に中村七之助さんが泥酔してタクシーに無賃乗車した上に、駆けつけた警察官に暴行をしたとして、公務執行妨害で現行犯逮捕されました。このときは3ヵ月の謹慎処分を受けています。 鶴松さんのケースもほぼ同様ですので、襲名披露の延期は致し方ないかもしれません。映画『国宝』の盛り上がりで、梨園出身者ではない鶴松さんも注目され始めた矢先で“推し活”をする女性ファンも増えていました。彼は本当に努力家で、一般家庭から若手のホープとされるまでにのし上がった。それだけに残念です。本人は一から信用を取り戻すしかありませんが、歌舞伎界にとっても、かなり痛手となりました」 今後は、在宅のまま捜査が続くとみられる。