2人の米連邦捜査官、射殺した男性との衝突が激化した経緯 CNNの映像分析で明らかに

(CNN) 今月24日、米ミネソタ州ミネアポリスで看護師のアレックス・プレッティさん(37)が死亡する事態に至る混乱の中、 連邦捜査官2人の攻撃的な行動によって双方の衝突が致命的な銃撃に変貌(へんぼう)していたことが分かった。CNNの映像分析から明らかになった。 ミネアポリスの路上で起きた事件を捉えた映像には、他の捜査官がプレッティさんを拘束し、ウエストベルトから拳銃を押収する様子が映っている。一方で当該の捜査官2人が衝突を著しくエスカレートさせていることも分かる。彼らはまずプレッティさんの顔と頭部に催涙スプレーを浴びせ、繰り返し殴打。その後で武器を抜いて発砲した。この時プレッティさんは地面に倒れ、丸腰の状態だった。 複数の専門家がCNNの取材に答え、この捜査官2人の行動について、都市部の抗議活動に対処する準備が十分に整っていないと示唆。そうした当局者を全米の都市に大量配備する危険性が浮き彫りになったと指摘した。ここでの2人の行動とは、デモ参加者と接触した最初の瞬間から、銃を抜き、プレッティさんに発砲する決断に至るまでの一連の動きを指す。 「法執行機関は、常に事態の収拾と激化の抑制に努めるべきだ」と、移民税関捜査局(ICE)の元幹部、デボラ・フライシェイカー氏は述べた。しかし当該の捜査官2人の行動はその逆で、事態のエスカレートを招く形になっているという。 CNNの映像分析によると、騒ぎが一時的に収まり、当局者らが後退した後で、捜査官1人が無抵抗のプレッティさんに向けて立て続けに発砲した。 これらの2人の捜査官は、国土安全保障省(DHS)による事件に関する最初の報告書で発砲者と特定された捜査官とみられる。DHSは捜査官の身元を公表しないと発表している。本人らは現在休職処分を受けているが、これは捜査中の銃撃事件に関与した捜査官に対する標準的な手続きとなっている。 CNNのために映像を検証した法執行機関の専門家によれば、当該の捜査官らによる致死的な武力の行使は訓練不足、もしくは衝突が過熱する中で訓練から逸脱した行動を取ったことに起因する可能性が高いという。 「特定の職務について訓練も経験もない人物を監督なしで働かせれば、うまくいかないのは当然だ」と、ペンシルベニア州出身の元警部で武力行使の専門家であるアシュリー・ハイバーガー氏は述べた。 DHSの報道官は、この捜査官2人がどのような訓練を受けたのか詳細は明らかにしなかった。それでも「省内の捜査官の多くは軍隊や法執行機関での経歴を有する。そして国境警備隊員は連邦法執行機関による広範な訓練を受けている。まさにICEの捜査官がそうであるように。これらの捜査官が法執行の訓練を受けていないと報じようとするメディアの不快な試みは恥ずべきものであり、失笑を禁じ得ない」と述べた。 現場で事件が発生する前の数分間、動画には移民局捜査官らがミネアポリスの路上をパトロールし、通行人とやり取りを交わす様子が映っている。目撃者のニルソン・バラホナさんはCNNに対し、捜査官らが施錠したドーナツ店に逃げ込んだ人物を逮捕しようとしていたと話した。路上に残った捜査官らは状況を観察していた人物1人を拘束。それ以外の捜査官らは笛を吹いたり、人々に向かって叫んだり、携帯電話で動画を撮影したりしていた。 現場に居合わせた人物が撮影した動画には、当該の捜査官2人が映っている。1人は黒、もう1人は黄褐色のニット帽をかぶっている。黒のニット帽をかぶった捜査官は、抗議活動参加者に向けて催涙スプレーの缶を振っているように見える。 一方、映像の中のプレッティさんは車に合図をしながら、女性を道路から誘導している。 プレッティさんが撃たれる前の30秒足らずの間に、移民管理の捜査官らとその動向を見張る人々との衝突は激化した。映像には、黄褐色のニット帽をかぶった捜査官がそうした人々を繰り返し突き飛ばす様子が映っている。 プレッティさんが「おい、車道に押し込むな!」と叫ぶ声が聞こえる。捜査官は同じ人物を再度突き飛ばすと、続いてプレッティさんに向き直り、彼を押しのけて前出の人物を地面に押し倒した。プレッティさんが2人の間に割って入ると、黄褐色のニット帽をかぶった捜査官がプレッティさんの顔面に催涙スプレーを噴射した。 映像によると、プレッティさんは撃たれる数秒前、地面に引き倒された人物のバックパックをつかんでいる。右手には携帯電話を握っている。 黄褐色のニット帽をかぶった捜査官は、催涙スプレーの缶でプレッティさんの頭部を何度も殴打した。 プレッティさんの死に関する捜査のDHSの初期報告書によると、捜査官らが発砲する前、そのうちの1人が「彼は銃を持っている」と何度も叫んだという。 プレッティさんは合法的な銃の所持者で、携帯許可証も持っている。この時コートの下のウエストバンドには拳銃があった。CNNが検証した複数の映像によると、プレッティさんが衝突の際に銃を振り回した証拠はない。 警告を受けた時点で、銃はまだプレッティさんのウエストバンドに収まっていた。CNNのために映像を確認したある法執行官は、銃を目視しただけでは発砲の理由にはならないと指摘した。 「鍵となるのは手だ」と、連邦法執行訓練センターで入国管理官を訓練したマーク・ブラウン氏は述べた。「両手が地面についた状態なら、武器は一定の懸念材料にはなるものの、必ずしも問題や脅威をもたらすわけではない」 発砲の数秒前、黒いニット帽をかぶった捜査官はプレッティさんに背を向け、別の抗議者への対応に気を取られていた。映像には、捜査官が催涙スプレーに手を伸ばし、使用しようとする様子が映っているが、作動しないようだ。 その後、捜査官はプレッティさんを拘束しようとしているグループに注意を向けた。もみ合いの最中、捜査官の一人が「銃! 銃! 銃!」と叫ぶ声が聞こえる。プレッティさんは膝(ひざ)をつき、前かがみになっていた。捜査官1人がプレッティさんのウエストベルトから銃を取り上げた。黒いニット帽をかぶった捜査官の目の前でのことだが、本人がそれを見ているかどうかは不明だ。銃を外した捜査官はその場を離れた。それと同時に、黒いニット帽をかぶった捜査官が自身の武器を抜いた。 映像では、プレッティさんの武器を持った捜査官が立ち去り始めてから約1秒後、黒いニット帽をかぶった捜査官がプレッティさんに向けて4発の銃弾を発砲したように見える。 モンタナ州立大学の音声鑑識専門家、ロバート・マーハー氏が行った発砲音の分析によると、捜査官たちがプレッティさんから後退する際、発砲に1秒弱の間が生じた。プレッティさんは地面に仰向けに倒れ、動かずにいた。 黒いニット帽をかぶった捜査官は後退した。銃は抜いていたが、銃口は下がっていた。この時、黄褐色のニット帽をかぶった捜査官も銃を抜き、1発の銃声が響く。 再び間を置いてから、黒いニット帽をかぶった捜査官が再度銃を構える。さらに5発が発射される。この時点で他の捜査官は全員後退していた。 法執行機関の専門家は、捜査官たちがなぜこれほど多くの発砲を行ったのか疑問視している。 サウスカロライナ大学の犯罪学・刑事司法教授、スコット・モートゴス氏は「今回の銃撃事件全体が憂慮すべき事態だ」としつつ、「2度目の一斉射撃には特に懸念を抱いている」と発言。最初の一斉射撃については、捜査官側が有利になるように解釈する余地もあると示唆する一方、2度目の一斉射撃が必要だったとする合理的な説明は到底不可能との認識を示した。 3人の専門家はCNNに対し、発砲のパターンには連鎖射撃の兆候が現れている可能性があると指摘した。連鎖射撃とは、捜査官が他の捜査官の銃声に反応して武器を発砲することを指す用語だ。 元巡査部長で犯罪学・刑事司法学の教授を務めるエリック・ドゥルゴレンスキー氏は 「そうした種類の環境で警察官にシミュレーションを実施したところ、刺激の存在によって発砲の可能性が11倍以上高まることが分かった。さらに発射する銃弾の数も72%増加する」と、述べている。 銃撃後の約25秒間、プレッティさんに近づく捜査官は一人もいない。その間、黒いニット帽をかぶった捜査官は銃を抜いたまま歩き回っている。最終的に、黄褐色のニット帽をかぶった捜査官を含む数人の捜査官がプレッティさんの横にしゃがみ込む。体を調べた後、医療処置を行ったようだ。DHSの報告書によると、税関・国境警備局(CBP)の要員が「プレッティさんの衣服を切り裂き、胸部の傷口にシールを貼るなど、医療処置を施した」という。 黒いニット帽をかぶった捜査官は道路を渡り、車両の横でプレッティさんへの応急処置が施される様子を見守っている。プレッティさんの方へ近づく様子は全くない。 救急隊が救急処置を開始すると、黄褐色のニット帽をかぶった捜査官は現場から立ち去ったようだ。 DHSの報告書によると、プレッティさんに発砲したのは国境警備隊員とCBPの捜査官だった。専門家によると、このような捜査官は通常、米国の街頭警備には配置されていないという。 連邦捜査局(FBI)に16年間勤務し、退職後は法執行機関の改革を訴えてきたマイク・ジャーマン氏は、「誰に遭遇するか分からない巡回パトロールの訓練を受けている連邦捜査官はほとんどいない。それはむしろ州や地方の警察の役割だ」と述べた。 元ICE幹部のフライシェイカー氏は、プレッティさんに致死的な武力を行使した捜査官の判断を批判。今回の銃撃事件には、トランプ政権の法執行戦略が採用する「最大限の力を行使するアプローチ」がどのようなものかが如実に表れていると述べた。

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