2月3日、警視庁は退職代行サービス「モームリ」の運営会社の社長・谷本慎二(37)とその妻を弁護士法違反の疑いで逮捕した。東北大学特任教授で人事・経営コンサルタントの増沢隆太さんは「退職代行という言葉の裏には、ユーザーの無知に付け込む法的リスクと、日本の職場が抱える根深い病理が隠されている」という――。 ■当初から疑問視されていた「モームリ」の問題点 退職代行ビジネスが注目され、そのネーミングの秀逸さによって、一気に知名度と業績を上げたのが、株式会社アルバトロスが運営する「退職代行モームリ」です。ところがその社長夫妻が逮捕されるという衝撃的な事件が起きました。何が問題なのか、そもそも退職代行ビジネスをどう捉えるべきなのか、を考えます。 モームリの谷本慎二容疑者らは、弁護士資格を持たないにもかかわらず、報酬を得る目的で退職希望者を特定の弁護士に紹介したという弁護士法違反(いわゆる非弁行為)容疑で逮捕されました。利用者からの相談に対して、弁護士へのあっせんを行い、弁護士側から紹介料を受け取っていた疑いがあると報道されています。 弁護士法では、弁護士資格を持たない者が報酬目的で法律事務に関わる行為や紹介・あっせんを、「非弁行為」として法律で禁止しています。さらに、退職日の確定や有給残処理、制服や貸与品など交渉や調整を、弁護士以外が行うことも非弁行為となります。 退職代行サービス自体は「本人の意思を伝える」範囲であれば違法ではありませんが、法律的な交渉・あっせん行為を含め、それを報酬目的に行うことは、当初から問題だと言われていました。筆者もこのビジネスが登場した際、交渉ができないのに「代行」と銘打つ名称には非常に違和感がありました。 本稿を執筆時点(2月4日)で、直接の逮捕理由として公表されているのは弁護士紹介においてマージンを得たことですが、弁護士法人ではない「モームリ」が退職交渉をしていたとするなら、これもまた法的には問題となります。 ■モームリを祭り上げたテレビ局 LINEなどSNSの普及によって、退職までSNSで済ませるという動きも出てきました。めんどうな交渉や会社からの引き留めを厭う若者中心には、対面もせずSNS上で依頼できる退職代行は歓迎され、爆発的な成長を遂げました。 そのマーケットリーダーとなった同社は、サービス名称・モームリという秀逸なネーミングで、マスコミからの注目も独占し、多くの同業他社を押しのけて、「退職代行=モームリ」と思われるほどの高い浸透を果たせたと思います。 トラックの荷台を看板にしたアドトラック。屋外広告手法として、アピールしたい地域を重点的に回れるなどメリットがあります。都心部の繁華街などで、一時期は「バニラカー」と呼ばれる、ナイトワーク中心の求人情報の宣伝が目を引きましたが、東京都の規制などもあり、一時期の勢いは減りました。 偶然かもしれませんが、それに代わって新宿の歌舞伎町周辺を、モームリのアドトラックが周回しているのを私は何度も見ています。 テレビのワイドショーやYouTubeの番組、ネットニュースから、時代を代表する社会現象として注目されたPR効果によって、とてつもない成功に結び付いたと思います。特に若者のニーズに合致していたことは間違いないでしょう。