剥き出しの身体に有刺鉄線、氷点下モスクワでウクライナ侵攻反対を示す「クイーンダム」本編映像

LGBTQ+の活動が弾圧されるロシアに突如現れた次世代のクィア・アーティスト、ジェナ・マービンを追ったドキュメンタリー映画「クイーンダム 誕生」(公開中)。このほど、自身の体をキャンバスに、無言のパフォーマンスを街に放つジェナが、ウクライナ侵攻勃発後の凍てつくモスクワの街で行った、命懸けの抗議パフォーマンスを捉えた本編映像、新場面写真、コメントが公開された。 ロシアの首都モスクワから約1万キロ離れた極寒の田舎町・マガダンに生まれ、祖父母に育てられたジェナ・マービン。撮影当初わずか21歳。かつて強制収容所のあった町は現在も保守的で、ジェナは「クィア」であるがために暴力や差別の標的とされてきた。その痛みやトラウマを、「アートという武器」に変えたジェナの芸術性はTikTokで支持を集め、「VOGUE RUSSIA」誌面にも登場するなど注目を集めた。監督は、ロシア出身でフランス在住のアグニア・ガルダノバ。 このほど公開された映像は、ジェナが自らの剥き出しの身体に有刺鉄線をきつく巻きつける衝撃的なシーンから始まる。鋭い刺が皮膚に食い込む痛みの中、ジェナは「不安だよ」と本音を漏らしながらも、氷点下のモスクワを無言で行進する。このパフォーマンスは、国家の暴力に縛られ、血を流す人々の苦痛を体現したものであり、通行人が驚愕の表情で振り返る中、ジェナはやがて当局に拘束される。本作は、プーチン政権下で個人の権利が急速に奪われていくロシアの惨状を記録しているが、これは決して遠い国の出来事ではない。 現在の日本においても、多様性に対する価値観の分断や、SNS等での不寛容な言説の広まり、また個人の自由と社会の在り方を巡る議論が絶えない。自国が不測の事態に直面した際、個人の思想や表現がどのような岐路に立たされるのか。ジェナが直面した「逮捕」「徴兵」「亡命」という現実は、不条理な状況下で自らの信念を貫く者が払わされる代償を冷徹に映し出している。本作は、自由や尊厳が失われていくプロセスを克明に記録した極めて重要なドキュメンタリーである。 ▼コメント ■ジェナ・マービン(主演/アーティスト) 「ロシアを離れて3年、まさか自分が亡命することになるとは想像もしていませんでした。『同性愛宣伝禁止法(ゲイ・プロパガンダ禁止法)』が施行された当初は、まだ対抗できると考えていましたが、状況は悪化の一途を辿りました。本来、法律は私たちの権利を守るべきものですが、それが機能しない場所では、私たちは守られません。ロシアの現状は決して特殊な事例ではなく、今や世界的な傾向です。自由が奪われる流れは、感染症のように瞬く間に拡大してしまうものなのです」 ■アグニア・ガルダノヴァ(監督) 「この映画の核は、ジェナと祖父母の関係性にあります。表現や愛の形を否定されながらも、そこには愛がある。これは多くの人が共感しうる世代間の衝突ですが、同時に、現代のロシアでクィアとして生きることの命懸けの危険性をも描いています。 政府に立ち向かう勇気はあるか。信じるもののために、友や家族、故郷を捨てることができるか。ジェナが下した痛みを伴う決断は、私たち全員にそう問いかけます。 自分を偽らず、自分らしく生き抜く勇気を持ってください。自分に正直であり、何者であるかを恐れずに示すこと。それこそが偏見と戦い、人々の考えを変える唯一の方法だと信じています。ジェナはそれを成し遂げました。次は、あなたの番です」 ■イゴール・ミャコチン(プロデューサー) 「力を合わせて声を上げ続けることが重要です。デモへの参加はもちろん、それが難しければ日常生活の中で自分にできる抗議の形を考えましょう。私たちにはまだ、行動を起こす権利が残されています。しかし、そうした権利は、何もしなければすぐに消えてなくなってしまいます。黙って座っているのではなく、一人ひとりが今こそアクションを起こすべきです」 ■伊藤さとり(映画評論家・映画パーソナリティ) 存在そのものがアート。 人と違う感性を宝石に変える力を持つジェナに目が離せなかった。 なのにジェナの自由を奪おうとする社会が存在する不思議。 表現の自由とはなんなのか? 人権とはなんなのか? 映画を観て、アナタなりの答えを出して欲しいと思った。

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