政府はインテリジェンス(情報収集・分析)活動の司令塔となる「国家情報局」を設置する法整備を進める方針だ。早稲田大学公共政策研究所の渡瀬裕哉さんは「国家情報局の創設は、日本の安全保障体制を大きく変える歴史的な改革になる。その成否は、どの省庁が主導権を握るかにかかっている」という――。 ■日本の行く末を決める「最重要法案」 高市早苗首相率いる自民党が衆議院で3分の2の議席を獲得したことで、通常国会では重要法案が次々に成立していく可能性が高い。 そのうちの「国家情報局」設立法案は地味ではあるが、わが国の行く末を決めることになる最重要法案だ。 日本ではここ数年、「情報(インテリジェンス)」という言葉が急に生活の近くに降りてきたように感じる。以前なら、情報機関といえば映画の中のスパイや、どこか遠い国の話だった。 しかし今では、サイバー攻撃や経済安全保障、中国やロシアなど外国勢力による政治工作、SNSを通じた世論操作など、日常のニュースの中に当たり前のように登場する。もはや「情報(インテリジェンス)」は専門家だけのものではなく、社会全体の安全に直結するテーマになっている。 こうした状況を受けて、政府が「国家情報局」創設法案を提出するという話題が注目を集めている。同法案は、現状の内閣情報調査室を強化し、政府内部のインテリジェンス情報を一元化するための法案である。 ただし、いずれ創設が想定される「対外情報機関」を念頭に置いた組織となることは明らかであり、国家情報局がいかなる内容になるかによって、日本の外交安全保障能力は大きく飛躍する、または制約されることになるだろう。 ■外務省か、防衛省か、それとも… そして、どの省庁が主導して国家情報局を作り上げるかによって、その組織の性格はまったく別物になる。情報機関というのは、単に情報を集めるだけではなく、集めた情報をどう扱い、どう判断し、どう行動につなげるかが本質だからだ。 国家情報局設立にあたって、各省庁が縄張り争いをしているというメディア情報も散見されるが、やはりベストな体制を作り上げることが国益にかなうものと思う。 本稿では、国家情報局は警察主導で構築されるべきだという立場から、その理由をできるだけ平易に、肩肘張らずに述べていきたい。外務省、公安調査庁、防衛省が過度な影響力を持つべきではない理由についても、具体例を交えながら説明していく。 まず、警察が主導すべき最大の理由は、国内情報の扱いにおいて圧倒的な実働能力を持っている点に尽きる。国家情報局が扱うべき情報の多くは、外国勢力の政治工作、サイバー攻撃、テロの兆候、経済安全保障上の脅威など、国内の人物や団体、企業、インフラに直接関わる。つまり、情報を集めるだけではなく、必要に応じて捜査し、監視し、場合によっては強制力を伴う措置を取らなければならない。