『リブート』は日曜劇場を“再起動”させた 敵味方問わず貫かれた“自己犠牲”の精神

3月29日に日曜劇場『リブート』(TBS系)が最終回を迎えた。 本作は、ある目的のために顔を整形して別人に生まれ変わる男の物語。妻の夏海(山口紗弥加)を殺害した容疑で警察から追われる身となったパティシエの早瀬陸(松山ケンイチ)は、夏海を殺し、自分に罪を擦り付けようとしている真犯人を見つけるため、何者かに殺された刑事・儀堂歩(鈴木亮平)としてリブート(再起動)する。 儀堂になりすました早瀬は、夏海の同僚だった公認会計士の幸後一香(戸田恵梨香)と共に、夏海が働いていたゴーシックスコーポレーションの内偵捜査をおこなうのだが、やがて、非合法な手段で儲けた金を資金洗浄する裏社会の金融機関(ダークバンカー)を営む合六亘(北村有起哉)こそが、全ての元凶だと知る。 合六の目的は、野党第一党の党首・真北弥一(市川團十郎)を総理大臣にすることだった。そのための軍資金として合六は、真北に闇献金をおこなっていたが、その金は裏社会の金融機関から横領したもので、その罪を他の人間に擦り付けては殺すということを繰り返していた。 早瀬は、真北の弟で監察官の真北正親(伊藤英明)と協力して、合六が真北に100億円の違法献金を渡す現場を押さえて逮捕しようとする。そのために、合六の部下で汚れ仕事を請け負っていた冬橋航(永瀬廉)を味方につけようとするが、逆に冬橋に捕まってしまう。 一方、一香は、合六の顧問弁護士・海江田勇(酒向芳)を脅迫し、取り引きをおこなう場所を聞き出して現場へ向かう。しかし、そこにいたのは真北監察官で、実は彼こそが警察の情報を合六に漏らしていた内通者だったことが判明する。そして、早瀬に説得され、彼を助けようとした冬橋も裏切りがバレて、相棒の霧矢直斗(藤澤涼架)に銃を向けられる中、第9話は終了した。 最終話。冬橋に銃を向けた霧矢は合六を裏切って冬橋の側に付く。そして、真北監察官も、兄を逮捕するために裏切ったふりをしていたことが判明。戦況は反転し、合六たちが窮地に追い込まれる。このあたりは概ね想像通りの展開だったが、すべての登場人物の行動が「家族のため」というポイントに集約されていくのが、とても美しかった。 第8話で一香の正体がリブートした早瀬夏海で、家族を必死で守ろうとしていたことが判明したあたりから、本作最大のテーマは“家族”ではないかと感じていた。だが、主人公の早瀬陸と夏海の夫婦を軸に家族の絆を描くのであれば、敵サイドの悪役は、家族を犠牲にしても何とも思わない孤独で冷徹な人間を配置するところだろう。 しかし『リブート』では、悪役にも愛すべき家族がいて、必死で守ろうとする姿が描かれる。最初にそのことに気付いたのは第6話で、合六が自宅で妻と子どもと和やかに話している場面だ。子どもと妻を大切にする合六の姿を観た時は妙な違和感があった。またこの場面では合六の妻・陽菜子(吹石一恵)が夫の仕事の全貌は知らないが、彼を信頼し後ろから支えようとしている姿も描かれていた。 最終話、「この国の革命のために生き残るか、家族のために罪を認めて死刑を受け入れるか、どちらか選んでください」と真北監察官から言われた合六は「家族を助けてください」と懇願する。冷酷非道な悪党だった合六もまた、早瀬と同じように家族を守ろうとする一人の父親だったという結末には、不思議な温もりを感じた。また、早瀬が正体を隠して息子や母親に会いに行く場面が劇中では繰り返し描かれたが、儀堂に扮した早瀬が息子と話す場面は殺伐とした描写が多い本作の中で、一服の清涼剤となっていた。一方、一香に顔を変えた夏海は、正体を隠して入院している一香の妹・綾香(与田祐希)に会いに行き、殺された一香の意思を継いで綾香の手術費用を捻出しようとしていた。 最終話では、実は綾香は姉が別人だと気づいていたことが判明するのだが、綾香は姉のフリをして自分を支えてくれた夏海に感謝する。他のドラマで見たらあざといシーンと思うかもしれないが、素直に感動できたのは、本作が描く世界が、あまりに過酷で苦しいからだろう。 脚本の黒岩勉は、本作の肝といえる「リブート」を、物語を盛り上げるアイデアとして器 用に使いこなしていた。死んだはずの本物の儀堂歩が再登場する場面や、一香の正体が夏海だったと判明した時は、こんな面白い展開があるのかと驚いたが、手に汗握るクライムサスペンスとしての面白さの横には、家族のために生きようとする人々の温かいヒューマンドラマが常に存在していた。 裏社会の内幕を描いていた本作は、簡単に人が殺され、埋められていく殺伐とした物語だった。その意味でこれまでの日曜劇場作品からは、だいぶ逸脱した内容だったが、それでも日曜劇場らしかったと思うのは、敵も味方も家族のことを第一に考えて行動する自己犠牲の精神が描かれていたからだろう。 この極端な両輪でバランスをとることで、本作は日曜劇場をリブートしたのだ。

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