マネーロンダリング(資金洗浄)を請け負い、日本や香港での現金強奪事件への関与も噂される陰の存在。犯罪集団が頼る闇の両替商「相対屋」の実像

昨年度の日本の特殊・SNS詐欺による被害額は3000億円を超え、トクリュウを筆頭とする犯罪集団は巨額の犯罪収益を抱えている。その資金洗浄、さらには中国人富裕層の資産逃避のために暗躍しているのが「相対屋」と呼ばれる両替商たちである。国をまたいで活動を行ない、警察の捜査をもかいくぐる彼らの知られざる実態に迫った。 * * * 【金塊と仮想通貨を商材に裏社会で暗躍】 真冬の東京で、数時間のうちに大金を狙った強盗事件が相次いだ。まずは1月29日夜、東京都台東区上野の路上で男女5人組が襲われ、羽田空港を経て香港に持ち運ぶ予定だった現金4億円余りが奪われる強盗事件が発生。 そしてわずか3時間後の30日未明には、その羽田空港の駐車場で、約1億9000万円の現金を持った4人の男性からなる別のグループが襲撃されたのだ。 このとき現金は奪われなかったが、うち2人は現金を持って香港に渡航。2人のうち1人が犯人グループと内通していたことから居場所がバレ、現地で再び襲撃されて約5100万円を強奪された。 一連の事件の容疑者は日本と香港でそれぞれ逮捕されており、犯行の経緯などについては今後明らかになるとみられるが、ここでひとつ疑問が浮上する。なぜ被害者らは金融機関を介した国際送金を利用しなかったのか? 上野と、羽田・香港での被害者は、それぞれ別の人物からなるグループとみられる。一部報道によると、羽田で襲われた被害者の1人が「金を売却して得た日本円を毎日のように香港に運んでいる」という趣旨の証言をしたという。 それでもなお一般常識からすれば、なぜ億単位の現金を不用心にも手荷物として海外に持ち出そうとしたのかは理解できない。1億円の札束は重さにして約10kg、大きさはティッシュケース7個分以上とかさばるのに、だ。 現金を運んでいた被害者について「彼らは相対屋でしょうね」と即答するのは、金取引による節税術を指南するファイナンシャルプランナーで、金流通に詳しいA氏だ。 「相対屋とは、金や仮想通貨などを、取引所を通すことなく希望者と一対一の相対取引をする業者のことです。基本は対面での現金取引で、1%前後の取引手数料や売りと買いの価格差で利益を上げます。 香港の地下市場では国際市場よりも5%前後割安で金が取引されており、これを相対取引で1億円分買いつけ、日本国内に無申告で持ち帰って販売するだけで、少なくとも数百万円の利益になる」 事件発生直後には、「消費税の不正利ざやを目的とした金塊密輸の原資だったのでは?」という臆測も流れた。過去には金地金(金塊)に税が課されない香港やシンガポールなどで購入した金を日本に密輸して売却することで、消費税分の利ざやを不正に得るというスキームが横行していたことが背景だ。 だが、A氏はこう指摘する。 「2019年の税制改革や23年のインボイス制度導入で、出どころのわからない金は売却時に消費税を受け取れなくなり、輸出時の還付もほぼ不可能になった。今は10%の利ざやを狙うのは困難です」 ところで、なぜ彼らの顧客は出どころの知れない金塊を相対取引で購入するのか。 「税務署をはじめとする各当局による資産監視から逃れたいという富裕層はいくらでもいますからね。取引所や金融機関を通して金塊を買えば、その記録が残り、当局に『この取引の原資は何?』と追及され、納税を迫られる。 海外から持ち込んだ足のつかない金塊であれば、その心配なく資産を保有できる。さらに溶解して再加工すれば、仮に現物を押さえられても『数十年前に買ったもの』という言い訳も通じますから」

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