【社説】部活バス事故 現場任せの改善が急務だ

命を預かる責任をないがしろにした大人たちが、17歳の未来を奪ったに等しい。亡くなった高校生と家族の無念は察するに余りある。 福島県郡山市の磐越自動車道で、新潟市の私立高の男子ソフトテニス部員20人を乗せたマイクロバスがガードレールに衝突した。1人が死亡、多数の生徒が負傷した。 練習試合に向かう途中だった。自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで逮捕された運転手の男(68)はカーブを「曲がり切れなかった」と供述している。 男は数カ月前から物損事故を5、6回繰り返していた。警察からは先月、運転免許証の返納を2度促されている。速やかに応じていれば事故は起きなかったはずだ。憤りを禁じ得ない。 バス運行会社のずさんな管理も看過できない。運転手は営業担当者が知人を介して手配したという。男は旅客運送に必要な2種免許を所持しておらず、会社側は事故歴を含めて把握していなかった。 マイクロバスは会社が用意したレンタカーだった。事業用の緑ナンバーではなく、許可がなければ客を有償で運送できない。白バス行為の疑いがあり、安全と法令の軽視としか言いようがない。 部活顧問の教諭は自家用車で遠征先に向かった。男は出発直後から危うい運転だったという。顧問が同乗していれば制止できたのではないか。 再発防止のためには早急な事実解明が必要だ。だが、学校側と会社側の認識には食い違いがある。 学校側は貸し切りバスを依頼したと説明する。会社側は費用を抑えるためにレンタカーと運転手の手配を学校側から頼まれたと主張している。 顧問は過去に複数回、同じ会社にバスの手配を依頼していた。契約書は交わさず、学校側も確認していなかった。顧問だけでなく、学校全体に生徒を守る意識が欠如していたと言わざるを得ない。 部活の遠征中の交通事故は全国で相次いでいる。九州でも2009年と11年、大分県の高校野球部員を乗せたバスが事故を起こし、計2人が亡くなった。 背景には今回と同様、多くの学校が部活を教育課程外の自主的な取り組みとして、安全管理を現場任せにしている実態がある。 バス料金が高騰する中、教員や保護者が車を運転するケースは少なくない。各教育委員会は公共交通の利用を促すが、不便な地域の学校は対応しきれない。大分県のように運転手の費用を補助している自治体もある。 政府は遠征中などの安全確保を検討する連絡会議を設置した。6月末をめどに対策を示す方針だ。現場の実情に即した移動手段の指針を設けることなどが求められる。 学校側も教員らに運転研修を定期的に課すなど、組織として安全管理に関わる体制の整備を急いでもらいたい。

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