スターマー英首相に関連する車両や住宅へ放火、男性2人に有罪評決

ダニエル・デ・シモーニ 調査報道担当編集委員 昨年5月に、キア・スターマー英首相と関係する住宅や乗用車が放火された3件の事件について、ロンドンの刑事法院の陪審団は15日、放火を共謀した罪で男性2人に有罪を言い渡した。 有罪を言い渡されたのは、ウクライナ国籍のロマン・ラヴリノヴィッチ被告(22)とウクライナ生まれのルーマニア国民、スタニスラフ・カルプッチ被告(27)。 住宅2軒と車両1台に対する一連の放火事件は昨年5月、ロンドン北部で起きた。スターマー首相がかつて所有していたトヨタ車がロンドン北部の路上で燃えたほか、数日後には住宅2軒から出火した。そのうちの1軒は首相がまだ所有しており、親族に貸し出されていた。 検察は、放火の実行犯ラヴリノヴィッチ被告は、通信アプリ「テレグラム」を使うロシア語話者の「ELマネー」に勧誘され、放火行為と引き換えに金銭報酬を約束されたうえで、犯行に及んだと陳述した。 2025年5月11日と12日にロンドン北部の住宅2軒が放火された事件について陪審は、生命を危険にさらす意図をもって住宅に放火して物的損害を与えた罪については、ラヴリノヴィッチ被告を無罪とした。 他方、生命を危険にさらすかどうかを配慮せず、無謀に放火して建物に損害を与えた罪では有罪とした。 3人目の被告、ペトロ・ポチノク被告(35)は、共謀した放火を企てた罪について、無罪となった。 被告3人はいずれもロンドン在住。2025年4月1日から5月13日の間に、火事を起こして住宅や車に損害を与えようと、お互いや他人と共謀したことはないと、罪状について否認していた。 2025年5月8日、首相が以前住んでいたロンドン北西部ケンティッシュ・タウンの通りで、首相が以前所有していた車が燃えているのが見つかった。 その3日後には、近くのイズリントンで、首相が数年前に住んでいた住宅が燃えているのが発見された。 さらに5月12日には再びケンティッシュ・タウンで、首相が妻の姉妹に貸していた住宅の入り口で火事が見つかった。ラヴリノヴィッチ被告が建物に火をつけた時、屋内には住民がいたという。 検察によると、ラヴリノヴィッチ被告は「EL」と言う偽名を使うロシア語話者に、オンラインで勧誘された。被告はこの人物の連絡先を「ELマネー」という名前で、スマートフォンに保存していた。被告はかつてこの「ELマネー」に極右的な内容のポスターを掲示するよう指示された。放火については、数千ポンドの報酬を約束されたが、支払いはなかったという。 検察は陪審員に対し、「ELマネー」の正体と、被告たちになぜ放火行為を指示したのかについては、考慮しないよう伝えた。さらに、燃やされた住宅や車両がスターマー首相に関係すると、被告たちが知っていたかどうかも、有罪無罪の判断には関係ないと伝えた。 調べによると被告たちは、特定の政治的・イデオロギー的な動機を抱いている様子はなかった。 最後の放火事件の後、「ELマネー」は5月12日にラヴリノヴィッチ被告に対し、「知らせたいことがある、仮想通貨を送る」、「服を捨てる必要がある」などのメッセージを送った。「ELマネー」はさらに被告に、「いいか、お前はイギリスでとても高い地位にある人物の自宅を攻撃したんだ。金を送る。街を出ろ」と伝えた。 ラヴリノヴィッチ被告はこの数時間後に逮捕された。 首相官邸の報道官はこの日の評決を受け、「恐ろしい攻撃」だったと述べ、捜査員と検察に感謝した。 公判中に被告側の弁護士たちは、「ELマネー」の行動は「専門家による」ものを思わせると主張し、「ELマネー」がいずれかの国のスパイだった可能性を指摘。被告たちは「ELマネー」に威圧され、脅されて行動したと弁護していた。 しかし裁判官は、陪審員が判断すべき罪状と「ELマネー」の正体は無関係だとして、「ELマネー」についての情報開示を求める弁護側の請求を退けた。 公判では、被告3人の金銭的動機が焦点となった一方、攻撃を指示したとされる「ELマネー」の身元と動機は明らかにされなかった。 しかし、BBCの調査報道番組パノラマの取材では、「ELマネー」がロシアの外交官エフゲニー・リュクシン氏(23)だと分かった。リュクシン氏はロシア政府の最高レベルに近い政府高官の息子で、プロパガンダを広める扇動家やスパイから情報戦教育を受けていると示す証拠を、BBCは入手した。 BBCが確認した「ELマネー」からの複数のメッセージは、攻撃を実行すれば引き換えにロシア市民権を与えると約束したり、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を称賛したりしていた。 (英語記事 Two men found guilty over Starmer-linked arson attacks)

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