韓国の良心的ジャーナリズムの象徴ともされた放送局JTBCはなぜ崩壊に至ったか

2026年6月12日、衛星放送やケーブルテレビ向けの放送を行っている放送局、「JTBC(ジェイティービーシー)」が約206億ウォン(約22億円)の資産流動化借入金の返済期限を守れず、デフォルト(債務不履行)を宣言した。 その3日後の6月15日、JTBCはソウル回生法院(企業再建専門裁判所)に回生手続き(日本の民事再生手続きに相当)の開始を申請した。 これを受け、JTBCの親会社である中央グループの持株会社「中央ホールディングス」をはじめ、コンテンツ制作子会社の「コンテントリ中央」、映画館チェーン「メガボックス中央」、「中央P&I」の4社も相次いで回生手続きを申請。中央グループの中核5社が一斉に法的整理の手続きへと踏み込む事態となった。 JTBCは、2011年12月に開局した総合編成チャンネル(以下「総編」)だ。 韓国では、地上波3局(KBS、MBC、SBS)に加え、ケーブルや衛星で視聴できる総編が2011年から参入を認められており、JTBCはそのなかで最大の存在感を放ってきた。 その放送局が、開局からわずか15年で経営危機に直面するという事態は、韓国メディア業界に大きな衝撃を与えている。 ◾️中央グループとサムスンの切り離せない歴史 JTBCという放送局を理解するには、まず中央グループの成り立ちを知る必要がある。 中央グループの母体となる「中央日報」と「東洋放送(TBC)」は、1960年代に韓国の財閥であるサムスングループの傘下で設立された。 中央グループの創業者である洪鎮基(ホン・ジンギ)は、サムスン創業者の李秉喆(イ・ビョンチョル)と姻戚関係にあり、新聞社である中央日報はいわばサムスンの広報媒体としての役割も担っていた。 しかし1980年、全斗煥政権による言論統廃合政策により、東洋放送はKBSに吸収されてしまう。その後、1999年に中央グループはサムスングループから正式に分離独立し、独自の事業展開を始めた。 2011年の放送法改正により総編の開設が認められると、中央グループはJTBCを設立。サムスンの傘下にあった時代から数えれば、実に31年ぶりに放送事業への本格参入を果たしたのだ。 現在の中央グループを率いるのは、洪鎮基の長男である洪錫鉉(ホン・ソクヒョン)会長だが、実質的な経営は長男の洪正道(ホン・ジョンド)副会長が主導している。 なお洪錫鉉会長は、サムスングループの故・李健熙(イ・ゴニ)会長の妻である洪羅喜(ホン・ラヒ)氏の弟にあたる。つまりサムスン電子の現会長である李在鎔(イ・ジェヨン)氏は、洪錫鉉会長にとっては甥となる。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加