米連邦最高裁判所は米国時間6月29日、捜査機関がジオフェンス捜査を行うには有効な令状を取得しなければならないとの判決を下し、携帯端末の位置情報データを提出させるには相当な理由が必要であることを改めて示した。 この「Chatrie対合衆国」裁判の判決では、ユーザーの端末内にあるデジタルの位置情報データは私的なものであり、IT企業から追跡データを取得する政府の権限には憲法上の制限があるとされた。Elena Kagan判事が執筆した6対3の判決(PDF)の中で、最高裁は「個人には自身の携帯端末の位置情報に関する記録において、プライバシーに対する合理的な期待がある」とし、ジオフェンス令状は「憲法で保護されたその利益を侵害する」と判断した。 プライバシーの専門家らはこの判決を歓迎している。電子プライバシー情報センター(EPIC)のエグゼクティブディレクターを務めるAlan Butler氏は、判決後の声明で次のように述べた。「EPICは令状なしのジオフェンス捜査が、不合理な捜査および押収を禁じる憲法修正第4条の保護と根本的に相容れないものであると最高裁が認めたことを称賛する」 ジオフェンス令状と憲法 ジオフェンス捜査は一般的に、明確な容疑者がいない事件で捜査当局によって行われる。警察は事件現場の周辺の地図上に範囲を指定し、照会したい時間帯を特定した上で、その時間内にそのエリア内に存在した接続端末の情報を求めるジオフェンス令状を大手IT企業に出す。 警察はこの情報を容疑者や不審人物と照合した後、ジオフェンス内にあったデバイスにひも付く追加のアカウント情報、例えばメールアドレス、電話番号、ユーザー名などの提出を求めることができる。 最高裁は、ユーザーがGoogleのような企業に必ずしも自発的に私的情報を共有しているわけではないと判断した。これにより、人は他者に自発的に共有したデータについてプライバシーの期待を持たないとする法原則「第三者法理」は適用されないことになる。 その結果、不合理な捜査や押収を禁止する憲法修正第4条が、現在の形態のジオフェンス令状による侵害を防ぐ盾となる。これらの令状は、従来の捜査令状に比べて基準がはるかに緩く、法的な歯止めも少ない。 重要なのは、最高裁が捜査機関によるジオフェンス捜査を全面的に禁止したわけではないという点だ。警察はあらかじめ容疑者に関する相当な理由を確保した上で捜査令状を取得し、ジオフェンスデータをより限定的に利用しなければならなくなる。 批判的な立場からは、ジオフェンス捜査は潜在的な容疑者を特定するだけでなく、そのエリアにいるすべての人の位置情報を収集してしまうという指摘がある。捜査機関が地図上の広大な範囲を指定した場合、一度に数百万人もの人々の情報を要求することになりかねない。 ジオフェンス捜査は一種の逆検索とも呼ばれている。犯罪が発生した時に容疑者がそのエリアにいたことを示す証拠を自然に発見するのではなく、当局が位置情報データを利用して犯罪と容疑者を結びつけているからだ。 最も頻繁にデータ提出を求められるテクノロジー企業の1つであるGoogleは近年、ジオフェンス令状への対策を独自に進めており、ユーザーの位置情報データを「Sensorvault」サーバーからユーザーの端末内へと移行させている。それでも警察は、個人のスマートフォンから位置情報を提出させるために、依然として個人に令状を発することが可能だ。 これが普段耳にするジオフェンシングと違うように感じられるとすれば、それはこの言葉が、位置情報に基づく技術の複数の用途を指して口語的に使われているためだ。スマートホームの制御や、大手テクノロジー企業の広告手法を支える技術を指す場合もある。今回の最高裁判断が対象とするのは、あくまで令状だ。 この訴訟の経緯 原告のOkello T. Chatrie氏は2019年、19万5000ドルが奪われた銀行強盗事件への関与を警察に特定され、逮捕された。捜査当局はGoogleにデータを要求し、強盗事件が発生した時間帯に銀行の周辺にあった端末の位置を特定。容疑者の候補は19人からわずか3人に絞り込まれ、最終的にChatrie氏の逮捕へとつながった。 Chatrie氏の弁護人であるAdam Unikowsky氏は、警察には依頼人の情報を徹底的に調べるための相当な理由はなく、代わりに「政府が先に捜査を行い、後から容疑を膨らませることを可能にする道具」に頼ったと主張した。 たとえジオフェンス捜査とは無関係にデータが見つかっていたとしても、追加の令状は違憲になるとUnikowsky氏は主張した。なぜなら、「単に犯罪現場の近くにいたという理由だけで、ジオフェンス内にいるすべての人間の仮想的な私的文書を捜査する」ための相当な理由は依然として存在しないからだ。 この新たな判例が、Chatrie氏の事件を含む過去の事件の結末にどのような影響を与えるかは不透明だ。これまでの裁判では、ジオフェンス捜査による証拠が善意で取得されたものであるとして、Chatrie氏の量刑は変わらないと判断されていたが、最高裁の判決によって令状の有効性そのものに疑問が突き付けられた形だ。 Chatrie氏の事件は下位の控訴裁判所に差し戻され、ジオフェンス令状を出すための相当な理由があったかどうかが改めて審理される。Chatrie氏の弁護団の代表者は、コメントの依頼にすぐには応じなかった。 この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。