「娘はなんのことだかまったくわからずに警察に連れていかれました。不当な勾留をされ、身に覚えのない取り調べを受け、さぞ怖かっただろうと思うと涙が止まりません」 兵庫県内の障害者福祉施設に勤めていた少女(当時16歳)が昨年12月に極度にやせ細り、低栄養状態となって死亡したのは、兵庫県警や神戸地検の違法な捜査や勾留、取り調べが原因だったとして、少女の母親が6月17日、県や国に国家賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こした。母親は冒頭のように言い、少女が勾留中に取り調べの様子を記録していた「被疑者ノート」を見せてくれた。その記述からは、警察や検察の不当な勾留や取り調べの一端が見えてくる。 * * * 少女の母親は兵庫県内で障害者福祉施設を運営している。母親の話や訴状によると、少女は障害者支援に力を注ぐ母親の背中を見て育ち、障害者福祉施設のスタッフとして働くようになった。必要な資格も取得し、利用者にも信頼を得て、施設にかけがえのない存在になっていた。その人生が暗転するきっかけとなったのは、昨年2月15日に開催された施設のバレンタインイベントだった。 イベントには施設利用者やスタッフ35人が参加した。その一人が在宅で生活介護などの支援を受けていた施設利用者のXさんだった。母親が振り返る。 「Xさんは在宅で介護のお世話をしていた利用者でしたが、人がたくさんいる場所は苦手で、イベントでも手足をばたつかせ、男性スタッフがとめようとしたが、イライラしたままだった。そのうちXさんは自分の指をかむ、近くの人にかみつこうとするなど、より不機嫌になっていった。娘はそれに気づき、Xさんの横に入ってなだめようとしたが、おさまらず、腕をつねられたりして大変だった。娘が『あかんよ』と言いながら、お菓子などをあげるとようやく落ち着いた」 母親はXさんにつねられて青あざになった少女の腕の写真も見せてくれた。 ■4カ月後にいきなりやってきた警察官 その後、イベントは大きなトラブルもなく無事に終了して、Xさんも自宅に帰ったという。 ところが、4カ月もたった昨年6月17日朝7時ごろ、突然、兵庫県警明石署の警察官が多数、少女が勤める障害者施設にやってきた。2月のバレンタインイベントでXさんに対応した少女と、もう一人の男性スタッフに、Xさんに対する暴行の疑いがあり、任意同行するという話だった。 少女の母親は別の施設にいたが、連絡をもらって現場にいた署員に電話で「30分ほどで着くのでそれまで待ってほしい」と求め、署員は「わかりました」と言ったという。だが、母親の到着を待たず、少女とスタッフは明石署に連行され、そこで暴行容疑で逮捕された。 「娘がなぜ逮捕されたのか、まったく理解できませんでした。16歳で、警察に調べられたり、かかわったりすることはまったくこれまでなかった」(母親)