ペルーの政権が再び「右派」のフジモリ一族の手に戻った。ドナルド・トランプ米大統領の就任以降、中南米では「ブルータイド(blue tide・右派政権化)」の風が強く吹いている。 6月29日(現地時間)に最終開票が行われたペルー大統領選で、右派のケイコ・フジモリ氏(51、人民勢力党)が得票率50.135%で当選した。終盤までもつれた接戦の末、左派のロベルト・サンチェス氏(共にペルーのために党、得票率49.865%)を0.27ポイント、約4万9000票差で破った。フジモリ氏は、犯罪への強力な対応や市場経済の維持、外国投資の拡大を公約に掲げた。 ペルーでは過去10年間に大統領が8人交代するなど、深刻な政治混乱が続いてきた。フジモリ氏は4度目の挑戦で当選を果たした。1990~2000年に大統領を務めたアルベルト・フジモリ元大統領の娘であり、政治的後継者でもある。今回の当選により、功罪が分かれる父フジモリ氏の影から脱したとの評価も出ている。 ペルーは1980年代後半、経済が崩壊寸前となるほどのハイパーインフレーションに見舞われた。反政府勢力との対立も重なり、社会は極度の混乱状態に陥った。日系移民家庭の出身で大学教授だった父アルベルト・フジモリ氏は、大統領就任後、強力な緊縮財政や市場開放、国営企業の民営化など新自由主義改革を断行し、経済を安定させる成果を上げた。 しかしその後、軍部を利用した「親衛クーデター」を起こして憲法を改正し、独裁体制を維持した。1990年代半ば以降は汚職や人権侵害をめぐる批判が絶えず、2000年に日本へ逃れた後、大統領を辞任した。2005年にチリで逮捕されてペルーへ送還され、禁錮25年の判決を受けて服役中だった2024年に死去した。独裁者の娘であるケイコ・フジモリ氏の当選は、有権者が治安回復と経済再建を求めていることを意味する。 中南米では各地で右派指導者が政権を獲得する流れが続いている。6月21日のコロンビア大統領選でも、強硬右派のアベラルド・デ・ラ・エスプリエヤ氏が当選した。ここ7~8カ月では、ボリビア、コスタリカ、チリでも右派系候補が相次いで勝利している。昨年のトランプ政権発足以降まで範囲を広げれば、アルゼンチン、パラグアイ、エクアドル、ホンジュラスでも同様の傾向がみられる。左派政権を維持しているのはブラジル、メキシコ、ウルグアイ程度だ。 中南米で有権者が右派へ傾斜した背景には、麻薬カルテル(犯罪組織)の横行による治安悪化がある。凶悪犯罪や殺人事件の急増を受け、有権者は犯罪撲滅を前面に掲げる右派指導者を支持する傾向を強めている。さらに、従来の左派政権が進めたばらまき型のポピュリズム政策による巨額の財政赤字や、トランプ政権による外交・政治面での圧力なども複合的に影響した。 トランプ大統領は、中国の影響力を抑え、不法移民問題を解決するため、中南米各国の大統領選で右派候補を公然と支持するなど、積極的に政治へ介入してきた。今年10月に4選を目指すブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は、先の主要7カ国首脳会議(G7サミット)でトランプ大統領に対し、「ブラジル大統領選に介入するな」と警告した。ブラジルまで右派政権に転じれば、「ブルータイド」は事実上、南米全域へ広がる転換点となる可能性がある。