1999年、名古屋市西区のアパートで主婦・高羽奈美子さん(当時32歳)が首などを刺されて殺害された事件。夫の悟さんは事件現場となった部屋を当時の状態のまま保存し、家賃を払い続けるとともに、殺人事件の公訴時効撤廃を訴え続けてきた(2010年時効撤廃)。事件は2025年、発生から26年目で容疑者が逮捕され、長年の未解決事件に終止符が打たれた。 事件を動かしたのは2024年、未解決事件の担当に異動してきた一人の刑事だった。悟さんはその時のことを「『今のビラを配ってもらっても、その中の情報では捕まりません』、この人随分失礼なことを平気で言うなと思ったんですけど」と振り返る。 刑事の特徴について「普通の強面の刑事という感じです。162、3センチでがっしりした、スキンヘッドで眼光鋭いので、いろいろなことを平気で突っ込んで聞いてくる。そこは、あれだけ言うにはよっぽど自信があったのか。それぐらい自分を追い込まないと、そういう覚悟を持って臨まないと解決しないぞと思って、自分にそういうプレッシャーをかけていたのか」と語った上で「あの刑事さんと出会っていなかったら、まだ解決していなかったと思います」と感謝した。 「できる刑事」「そうではない刑事」の違いとは何か。元徳島県警捜査1課警部の秋山博康氏は「一刑事のやる気とセンス。やっぱり『この事件を絶対に解決する』という刑事魂というやる気。それと(捜査対象者が)何百人といた中で『あら、これなんか違和感があるな、おかしいな』というセンスがある。昔、私がまだまだ刑事の若い頃、当時の刑事さん、先輩というのは個性がある先輩ばっかりだった」と説明。 「どんな個性かといったら、例えば取り調べが非常にうまい人が『落としの〇〇さん』とか、聞き込みの非常に上手な人がいて、それは『ネタ取りの〇〇さん』とか。今は段々と個性的な刑事さんは確かに減ってきた。だけど個性のある人というのは『この事件に絶対集中する』と。そうしたらやる気とセンスで、今回の高羽さんの事件はそうだったと私は思います」と続けた。 25年間動かなかった事件が、担当の異動から一年で逮捕に至ったことについて「濃淡があってはいけないのでは」と刑事の能力差について指摘されると「私も42年やってきて、捜査本部にも行った。やっぱり私は2つ理由があると思う。1つは人事異動がある。そうしたら発生時の燃えたぎった刑事が『捕まえてやる!被害者のために』と思う刑事が異動で変わる。そうしたら次変わった人は事件を知らない、そういうのがある。それとやはり公務員ということで、やってもやらなくても給料があると。だから今回の高羽さんのように捕まえた刑事さんは、私は本当に刑事全員が見習ってほしいと私は思います」と語った。 犯罪心理学者の出口保行氏は「よく言われているのは、コツと勘とセンス。この3つがいいかどうかということは警察官の能力を決定している」とコメント。 「コツというのは、基本的にはコミュニケーション能力。相手とのコミュニケーション、それが疑う人であれ被害者の方であれ、その人とのコミュニケーション能力をどう高めていって、いろいろな情報をどうやって引き出すことができるのか。これがコツの部分になっている。勘というのは勘がいいとか悪いとか、それもそうだが、それよりも心理学の世界ではリスク認知とよく言うが、『ここにどんな危険性が潜んでいるのか』『危なさがあったのかなかったのか』というのをかぎ分ける能力。これが鋭いかどうかも大きい」 「それからセンス、これが一番大事なポイント」と続けると「今ここにあるもの、こういう証拠があって、そこから何を推測することができるのか。よく今『プロファイリング』という言葉をみなさん聞くと思う。これは統計的に『こういう事件はこういうところに犯罪者が出やすくて、次はこういう犯罪をしやすい』というのを予測していく能力。結局、プロファイリングというとなんとなく格好いいようなイメージがあるが、実際は日本の警察官だったら一人ひとりがそれをやっている。それが非常に素晴らしいので、日本の警察は常に優秀だと。だからコツ、勘、センスがどう機能しているのか。それを機能させることができる組織であるのかが事件解決には一番影響する」と語った。 「担当の刑事を変えてもらうことはできるのか?」という質問に秋山氏は「捜査本部はピラミッド型になって、捜査一課長や二課長がいて、段々一つのチームになる。だからその幹部がどう見るか。『この捜査員はちょっと無理かな』といったら変えることも可能」と回答。しかし「ご遺族の方から言うこともできる?」という問いには「本来ならご遺族の人が言ってほしいが、なかなかご遺族の人が言ったからといって人事を変えるというのはほとんどない。残念ながら…」とコメントした。 「捜査本部でも犯人を検挙する捜査員と、被害者班というのがある。被害者班の捜査は非常に大事。被害者班の捜査員がいかにご遺族の気持ちを分かってあげるか、それは非常に大事」(秋山氏) 「ただ、形式的な仕事ではやっぱり駄目だと思う」と続けると「ご遺族の意見も聞く、そして捜査の内容も言える範囲はご遺族に伝える。これも絶対に必要だと思う。何もかも、例えば遺族が『どうなってますか?』と言ったら『捜査上言えません』とよく言われるが、それはどうかなと思う。ある程度、後々の公判が維持できる内容であれば『これだけのことをやっています』『こういう捜査やります』とご遺族に説明義務はあると思う」と自身の考えを述べた。 (『ABEMA的ニュースショー』より)