アングル:麻薬運び屋に航空会社乗務員を利用、タイでSNS通じた勧誘の構図

Juarawee Kittisilpa Panarat Thepgumpanat [バンコク 3日 ロイター] – 6月18日の早朝、タイの首都バンコクにいた客室乗務員のTikTok(ティックトック)のインボックス(通知やメッセージの確認場所)に、見知らぬアカウントから一連の質問メッセージが届いた。「オーストラリア行きの便はあるか。『運び屋』‌をしているか。料金はいくらか」といった内容だった。 地方の格安航空会社に勤務するこの30歳の女性は、そのメッセージを無⁠視して忘れていた。だが、6月30日にタイ国際航空の客室乗務員が、複数のトートバッグに隠して1キログラム超のヘロインを豪州に持ち込んだ疑いで起訴されたことで、実はそれが麻薬密輸の勧誘だった可能性に気付いた。 国営航空会社の客室乗務員が拘束されるという異例の事態は、​タイ国内に警鐘を鳴らしている。空港のセキュリティー対策に疑問を投げかけるとともに、国際的な密売ネットワークが、東南アジア諸国を超えて収益性の高い市場へ違法薬物を持ち込むために、航空機の乗務員を標的にしているという‌懸念が高まったからだ。 タイのアヌティン首相は、3日に開催された国家麻薬対策委員会の会合で「報道によれば、今年上半期だけでタイから渡航した少なくとも6人が麻薬密売の罪で起訴されている。これは高い数字と見なされ、国のイメージを損なうものだ」と危機感を訴えた。 同国の主要空港の運‌営会社は、乗務員を含む手荷物の検査と点検を強化する見通しだ。‌政府報道官は、航空会社は他人のために物品を運んだり受け取ったりしたスタッフに対して厳重な​懲戒処分を下す予定だと説明した。 ロイターが取材した先のバンコクの客室乗務員は、メッセージを送ってきたアカウントについて「このような見知らぬ人には返信しない。われ‌われは『運び屋』禁止という規定に関して常に警告を受けており、それは周知のルールだ」と冷静に語った。 タイ麻薬取締委員会(ONCB)の広報担当者は、タイ語で「粉は粉」と名付けられたその正体不明のアカウント‌は、偽のSNS(交流サイト)アカウントを作成して国境を越えて​違法薬物を運ぶ人物を探す麻薬密売ネットワークと関連していたと述べた。 その上で「当該アカウントは現在閉鎖さ‌れている。ONCBが調査中で、予備調査の結果として同アカウントは多くの異なる名前を使用していたことが判明した」と明らかにした。 タイ国際航空は、客室乗務員の拘束を受けた声明で、全⁠従業員の行動を規定する厳格な規則を設けており、関係当局に協力すると強調した。 <国境を越えた移動> タイ当局によると、密売ネットワークは大規模な製造施設を持つ近隣諸国から麻薬を調達した後で衣類、コーヒーの袋、花瓶などの物品に隠してタイ国内を移動させている。 国連薬物犯罪事務所(UNODC)の昨年12月の報告によると、隣国ミャンマーにおけるヘロイ⁠ン製造のためのケシ栽培は、昨年時点でこの10年の最高水準まで急増した。 紛争や経済的困窮により、より多くの​農民が違法取引に手を染めるようになり、ア‌フガニスタンでの生産が減少する中で、戦火に揺れるミャンマーは世界で最も知られた違法アヘンの供給源となっている。 ONCB事務局長で警察幹部のスリヤ・シンカムル氏は、タイでは密売ネットワークが客室乗務員を含む特定の旅行者グループをターゲットにして、海外への麻薬輸送を支援させているとの認識を示した。 豪州で⁠逮捕されたタイ国際航空の客室乗務員は最初、有料で荷物を海外へ運ぶサービスを提供するSNSグループに投稿していたという。 スリヤ氏の話で⁠は、その後当該客室乗務員は「ローズ・ローズ」という名前のフェイスブックのユーザーと連絡を取り始め、最終的に8800バーツ(265.46ドル)の報酬で合意した。 豪連邦警察の説明に基づくと、⁠客室乗務員が運んでいたバッグの裏地に隠されたヘロインの末端価格は、推定50万豪ドル(34万7150米ドル)に上る。 スリヤ氏は、同様の手法を用いて、麻薬密売ネットワークは6月30日から7月1日の間に、バンコクから豪州‌と台湾へさらに5つの⁠荷物を送る準備をしていたが「当局は民芸品、シルクの衣類、コーヒーの袋、冬用ジャケットの中に隠された24.38キロのヘロインを押収した」​と述べ、タイの捜査機関が豪州および台湾の当局と協力していると付け加えた。 これまでにタイ当局は、国境地域からバンコクへ薬物の小包を送った疑いで、タイ人の男とそのラオス人の妻の2人を拘束している。

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