大統領公邸に警察官ら100人ほどが押し寄せる。立ちはだかったのは公邸警備を担う約200人。一部は銃を所持し、スクラムを組んで″人間の盾″を作り警察官らを威嚇(いかく)して行く手を阻んだ――。 1月3日に起きた韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領(64)への拘束令状執行をめぐる騒動は、内乱の様相を呈していた。『コリア・レポート』編集長・辺真一(ピョンジンイル)氏が語る。 「尹氏は必死ですよ。拘束されれば内乱罪で収監されます。最高刑は死刑。何がなんでも拘束されないために、尹氏は公邸に籠城(ろうじょう)し徹底抗戦しているんです」 昨年12月に尹氏が非常戒厳を宣布して以来、韓国は大混乱している。尹氏は自身に反発する野党を「反国家勢力」と呼び、北朝鮮の差し金で動いていると決めつけ戒厳令で一掃(いっそう)しようとしたのだ。 「警察が押収した側近のメモなどから、尹氏が信じられない計画を立てていたことが明らかになっています。内乱罪で逮捕リストに載っている与党代表を、戒厳軍が射殺。北朝鮮による犯行と、でっち上げようとしたんです。同様に在韓米兵を殺害し、北朝鮮の仕業(しわざ)にしようとしていたとか。実際に尹氏側は、朝鮮人民軍の軍服140着以上を購入しています。計画が実行されていれば、米軍を巻き込んだ第二次朝鮮戦争に発展していたかもしれません。尹氏は北朝鮮との全面対決で、半島統一を成し遂げようと本気で考えていたようです」(辺氏) ◆危機的状況は溺愛する金建希夫人にも 1月中旬からは尹氏の弾劾(だんがい)裁判が本格的に始まる。2~3ヵ月の審理を経て罷免(ひめん)の可否が決まるが、結論によってはさらなる混迷を招きそうだ。元東京新聞ソウル支局長の五味洋治氏が解説する。 「もし尹氏が罷免されず復権すれば、汚職などの疑惑のある野党議員を片っ端から裁判にかける可能性があります。司法に圧力をかけ全員を重刑に。血で血を洗う報復の連鎖が起きるかもしれません」 罷免審理中は、韓国経済もどん底に落ち込むリスクがある。五味氏が続ける。 「1月に米国で誕生するトランプ大統領の新政策に機能不全の韓国政府は対応できず、経済は低迷すると思います。インフレや株安が進行。財閥企業が倒産し、職を失った人々がホームレス生活を強いられる可能性があるんです」 危機的状況にあるのは、罷免審理される尹氏だけではない。尹氏が溺愛する金建希(キムゴンヒ)夫人(52)も、夫の失権により有罪判決を受けるかもしれないのだ。 「’12年3月の結婚当時、尹氏はイチ検察官に過ぎず所持金は200万円ほどだったそうです。一方の金夫人はイベント企画会社などを経営し、資産は7億円もあったとか。尹氏は面倒をみてもらった金夫人に頭が上がりません。そのため金夫人に自動車販売会社の株価操作などの疑惑が浮上し野党が追及しても、尹氏は拒否権を発動し守り続けてきました。しかし罷免されれば拒否権を行使できない。おそらく夫人は、特別検察官による尋問を受けるでしょう。韓国では経済犯に対する罪が重い。懲役10年以上の実刑を受けるはずです。大統領夫妻が二人とも有罪判決を受けるのは前代未聞ですよ」(辺氏) 尹氏の支持派と反対派は、お互いの主張を受け入れず大規模なデモを繰り返している。韓国の分断は深まるばかりだ。 『FRIDAY』2025年1月24・31日合併号より