7月末、覚醒剤取締法違反(使用)などの罪に問われた男(69)=神戸市長田区=の公判が神戸地裁であり、情状証人として証言台に立った女性(69)が言った。「裁判が終わったら入籍します」。元妻の再婚宣言だった。男は前科14犯。女性は「これが最後だと信じ、支えたい」と語った。 男は今年5月に覚醒剤を使ったなどとして逮捕、起訴された。検察側の冒頭陳述によると、1981年から薬物事件などで服役を繰り返し、直近では2021年に懲役3年4月の判決を受け、昨年に刑期を終えたばかりだった。 2人の出会いは中学時代。別れてはよりを戻すのを繰り返し、40代で正式に夫婦になった。数年で離婚したが、再び内縁関係となって長い。「悪いところもあるけど、いいとこもいっぱい知ってる」。足の悪い自身の手を握って歩いてくれる優しさがうれしい。 「『愛』とか『好き』じゃない。『情』やね」 男は昨年2月に出所してから再び女性と同居を始めた。外食よりも親子丼などの手料理を好んだ。「普通の平凡な暮らし」が半年過ぎた10月、女性の誕生日に2人で婚姻届を書いた。 いつでも区役所に出せる状態だった。だが女性はためらい、足が向かないまま、その不安は的中する。 久しぶりに正月を一緒に過ごし、2月には薬物に関わることなく1年間を過ごせたことを祝い、ケーキを囲んだ。その後、男はかつての仲間からの誘惑に再び乗ってしまった。 過去に何度もあった男の裁判で、女性が証人として出廷したのは今回が初めて。女性は実刑を覚悟しつつ、心を決めた。 「『もうええやん』て、みんなにも言われるけど、誰かが待っててあげないと」。更生に向けて、彼を信じることにした。「最後の望みに懸けたい」 8月6日、男に下った判決は拘禁刑3年6月(求刑拘禁刑5年)。酒井英臣裁判官は「元妻のために再犯に及ばないよう努めると述べている」ことを量刑に勘案したと語った。女性は8日に婚姻届を提出。妻として夫の帰りを待つ日々が始まる。(初鹿野俊)