迫る拠点病院からの退去期限 大阪の性暴力救援センター 被害者に寄り添える運営模索

存続危機にあるNPO法人「性暴力救援センター・大阪SACHICO」(サチコ、大阪府松原市)の運営を巡り、大阪府が本格的な検討を始めた。民間病院を拠点に24時間相談に対応してきたが、医師らへの負担集中を懸念する府側は病院外に拠点を置き、複数の病院と連携する枠組みを想定。サチコは現在の拠点病院から3月末での退去を求められており、現場が納得した形で移行できるかが焦点だ。 サチコは平成22年、阪南中央病院を拠点に、性暴力被害者の相談を年中無休で受け付ける全国初のワンストップ支援センターとして開設された。病院拠点型ゆえに被害直後の初期対応が可能で、カウンセリングや法律相談、警察への仲介といった専門的な支援を総合的に受けられる。 ■「あなたは悪くない」 「何をされたのか、自分の言葉で話すことがどれだけ残酷か。(サチコがなければ)娘の負担を考え、回復を諦めた」 昨年12月4日、サチコを支援する市民団体が開いた記者会見。娘が小学1年の時に教員から性暴力を受けた母親は声を絞り出した。 被害の把握は犯行から数年後、この教員が逮捕されてからだった。いったい、どうすれば…。絶望の中で助けを求めたのがサチコだった。 性暴力被害者にとって、複数の医療関係者との面談のたびに自身の体験を説明させられることは二次被害につながる。サチコで娘が支援員に打ち明けた話は病院側で共有された。医師から「あなたは悪くない」と声をかけられ、「診察室から出てきた娘のほっとした表情が忘れられない」と母親は明かす。 母親も自責の念から、死の選択が頭にちらついた。サチコで医療ケアを受けた今、「生きているのはサチコのサポートがあったから」と語る。 ■昨年4月から診療休止 サチコで受ける相談はセクハラや性的虐待、不同意性交など幅広い。開設から昨年3月までの14年間の累計で電話は5万2198件、来所は1万4610件に上る。 しかし医師の残業規制が強化された「2024年問題」で病院側の協力を得るのが難しくなり、同年4月から診療機能は休止状態。今年3月末での退去を迫られている。

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