[社説]ストーカー殺人 被害者守る体制確立を

ストーカー被害に遭っていた女性が、殺害される痛ましい事件が起きた。全国的に対応を強化している中だったが防げなかった。 なぜ起きたのか。事件に至った経緯や動機の解明など捜査はもちろんのこと、警察の相談対応についても検証が必要だ。 宜野湾市のアパートで女性(23)が殺害された事件で県警は元交際相手の男(25)を殺人容疑で逮捕した。容疑を認めているという。 事件は先月30日午前8時半ごろ、目撃者の110番通報で発覚した。女性は首などに複数の刺し傷があり、その場で死亡が確認された。 約1時間後には、現場から約5キロ離れた那覇市内で男が首から血を流した状態で見つかった。自殺を図ったとみられる。 女性は昨年12月、男について「電話やLINE(ライン)をやめさせてほしい」と相談していた。県警は男に接触や連絡をしないよう警告したが、こうした行為は続き、今年2月にはストーカー規制法に基づく禁止命令が出ていた。 だが先月、位置情報の特定に使われる「タグ」が女性の車に付けられているとして女性が来署した。 県警は避難を勧めたものの、女性は仕事を理由に応じなかったという。事件前日には女性の安否確認も行っていた。 女性はシングルマザーだった。幼い子どもを連れての避難はハードルが高い。経済的な不安もあったのではないか。 県警の対応は規定にのっとったものだが、支援は十分だったのか。職場を含め地域で被害者を守る体制の確立が求められる。■ ■ 米軍基地が集中する県内ではさらに複雑だ。 北谷町で2019年、ストーカー行為を繰り返していた米海軍兵が日本人女性を殺害して自殺した事件では、米側から加害者の情報が十分に伝わっていなかったことも判明した。 ストーカー被害は年々深刻化している。 県警が今年1月〜8月末までに出した禁止命令は92件で、過去最多だった昨年をすでに上回った。相談件数も同期間で178件と最多ペースだ。 手口も従来の付きまとい行為のほか、スマートフォンの紛失防止タグを悪用するなど巧妙化している。 禁止命令を出されたことで追い詰められた加害者が行動をエスカレートさせる事例も後を絶たない。■ ■ 規制法は1999年に埼玉県桶川市で起きた事件を契機にできた。その後も事件を受けて法改正を重ねてきた経緯がある。 今年3月東京都で起きたストーカー殺人事件の加害者は、規制法違反で逮捕され釈放された後に凶行に及んだ。 加害の背景には「ゆがんだ認知」「孤独」「感情のコントロール障害」などがあると言われている。 しかし、治療は任意となっている。再発・未然防止の観点から治療を義務付けたり、治療費を支援したりする仕組みがいる。実効的な対策が急務だ。

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