王将社長射殺事件、工藤会系組幹部の被告に無罪判決 京都地裁

「餃子(ギョーザ)の王将」を展開する「王将フードサービス」の社長だった大東(おおひがし)隆行さん(当時72)を射殺したとして、殺人と銃刀法違反の罪に問われた特定危険指定暴力団工藤会系組幹部、田中幸雄被告(59)の裁判の判決が16日、京都地裁であった。西川篤志裁判長は、無罪(求刑・無期懲役)を言い渡した。 起訴内容は、被告が2013年12月19日早朝、京都市山科区の王将フードサービスの本社前駐車場で大東さんを拳銃で撃って殺害したというもの。 犯行の目撃証言など、被告が殺害したと明らかに示す直接証拠はなく、裁判では、大東さんを殺害したのが被告なのかどうかが争われた。 検察側は、事件直後に現場近くで見つかったたばこの吸い殻2本について、吸い殻の唾液(だえき)のDNA型が被告のものと一致したと指摘。たばこの消火実験の結果や「事件前日の朝にはなかった」とする当時の従業員の証言などから、被害者を待ち伏せていた被告が事件直前に現場近くで吸って捨てたものだと主張した。 立証のもう一つの柱は、犯行の準備で使われたと検察側がみる軽乗用車と被告の関係性。事件後に現場から約1~1.4キロの地点で盗難オートバイとスクーターが見つかり、オートバイのハンドルから銃を撃った際に残る硝煙反応が確認された。2台は事件2カ月前に京都府内で盗まれた。スクーターの盗難現場付近の防犯カメラに映っていたのが軽乗用車だった。 検察側は軽乗用車について、外装の特徴から被告の幼なじみのものだと指摘。証人として幼なじみは、同じ頃に被告に貸したと証言した。 検察側は「被告と被害者との間に直接の面識や人的関係がうかがわれず、被告以外に被害者の殺害を遂げることを欲する者らが存在する」と言及。これらの氏名不詳者と意思を通じて犯行に及んだと主張していた。 一方、被告は昨年11月の初公判で「決して犯人ではありません」と起訴内容を否認。被告人質問は被告の意思で行われなかったが、判決前の最後の裁判では「傍聴席にいる一人ひとりの肩をつかんで犯人ではありませんと伝えてまいりたい」と訴えた。 弁護側は、たばこの吸い殻は、被告の犯行を裏付けるものではないと反論した。2本の吸い殻について、現場で吸っていたら存在する「白い灰」が発見されていないと指摘。犯人が被告を陥れるために吸い殻を持ち込み、事件前日より前から置かれていた可能性があると主張した。 軽乗用車についても、防犯カメラに映った車が幼なじみのものとは認められないと反論した。防犯カメラの画像は粗く、車の特徴をとらえていないと指摘。軽乗用車を割り出した手法について、対象地域を一部地域に絞り込んで捜査しており、不合理だと主張していた。 そのうえで、検察側の証拠からは「被告が拳銃を発射したとの説明に疑いなくたどりつくことはできない」と訴えていた。 田中被告は別の事件で有罪判決が確定して福岡刑務所(福岡県宇美町)で服役していた22年10月、殺人などの疑いで逮捕、翌月に起訴された。殺人事件は裁判員裁判の対象だが、今回は裁判官のみで行われた。被告が組員であることが考慮されたとみられる。事件の背景に何があったのか今も謎のままで、京都府警が捜査を続けている。(佐藤道隆、仙道洸)

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