〈不整脈が悪化している。薬を飲まないと急性心不全で心停止してしまいそう〉 〈これから会計なので9800円送って〉 男は死亡した交際女性になりすまして、彼女の父親へこんなショートメールを送りカネを無心していたという――。 1月7日、警視庁大崎署は詐欺と窃盗の疑いで住所不定無職の元作家・高島望容疑者(64)を再逮捕した。高島容疑者は昨年12月にも、白骨化した遺体を東京都品川区内の自宅マンションに放置したとして死体遺棄の疑いで逮捕されている。 「遺体は高島容疑者と同居し交際していた50代の女性Aさんとみられています。Aさんは病気のため’20年8月頃に死亡。高島容疑者は遺体を部屋に放置したまま、5年近くにわたり一人暮らしをしていたのです」(全国紙社会部記者) ◆「食べるのに困ってやりました」 白骨遺体との同居生活はおぞましいものだった。 「特に仕事もなく、相当カネに困っていたようです。部屋の家賃を長期間にわたり滞納。昨年12月に東京地裁の職員が強制執行のため入室すると、部屋の中は荒れ放題でゴミだらけだったとか。その際、リビングの残飯などの下からAさんの遺体が発見されて死体遺棄での逮捕に繋がりました。室内は強烈な異臭が漂っており、近隣住民からは、たびたび苦情が出ていたそうです。 高島容疑者はAさんの死亡を親族に隠し、彼女の80代の父親に頻繁にカネを無心していました。Aさんになりすまし〈送金して〉などとショートメールを送り彼女の口座へ振り込ませていたことが、押収したスマートフォンから判明したのです。無心したカネの総額は三十数万円。警察の調べに対し、『食べるのに困ってやりました』と供述しています」(同前) 戦慄の暮らしをしていた高島容疑者だが、中央大学法学部卒業後の’90年代前半には華やかな生活を送っていた。 「大手消費者金融の『武富士』(’10年10月に経営破綻)に入社し、創業者・武井保雄会長(’06年8月に死亡)の娘と結婚。婿入りしたのです(現在は離婚)。その後、人事部長や社長室長を歴任。役員として高級スーツに身を包み、かなり羽振りの良い生活を送っていました。著書に『武富士流金儲けの極意 金貸しの神様、ここにあり』などがあります」(全国紙経済部記者) ◆参議院選挙に立候補 だが、何らかの理由で武富士を退社後、人生が暗転する。’95年7月の参議院選挙に新進党(当時)公認候補として地元・島根地区から立候補するも落選。作家としてもヒット作を出せず、厳しい生活を強いられていたという。 神奈川県警の元刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が言う。 「他人になりすまし、公的機関から年金を不正受給するという事件はよくありますが今回は特殊です。容疑者が娘になりすまして、80代の高齢者からカネを騙しとっていたのですから。通常なら、いくら父親でもショートメールのやりとりだけで送金しないでしょう。『カネは貸すがたまには顔を見せろ』『声を聞かせろ』と言うのが親心だと思います。 容疑者は、亡くなった女性と父親の“特別な関係”をよく理解していたのではないでしょうか。例えば父親が特殊な病気で直接会えなかったり、話すことができないなど。遺体を5年間も放置したにもかかわらず、なぜ周辺住民からの苦情でも発覚しなかったのかなど疑問点の多い事件でもあります」 武富士創業者の元娘婿の転落人生――。高島容疑者は「気が動転してどうしていいか、わからなくなっていた」と供述している。