名古屋市中区の路上で7月、友人と歩いていた稲葉朋来さん=当時(23)=がマンションからの飛び降りに巻き添えとなり死亡した事件で、稲葉さんの父健二さん(50)=三重県度会町=が重過失致死容疑で逮捕された男(29)について、「未必の故意」による殺人罪の適用を求め署名活動を続けている。 男は危険性を認識していたはずだとして、「娘の死を不幸な事故として終わらせない」と訴える。 朋来さんは7月19日午前1時ごろ、友人と歩道を歩いていたところ、マンションの11階から飛び降りた男と衝突し、出血性ショックで亡くなった。 発生の約1時間半後に連絡を受けた健二さんは「正直、訳が分からなかった」と振り返る。車で搬送先の病院に駆け付け、手術室で娘と対面した。「お父さんも、お姉ちゃんも来たよ」「痛かったやろう」。手を握り何度も声を掛けたが、朋来さんが目を覚ますことはなかった。 一命を取り留めた男は8月末、愛知県警に重過失致死容疑で逮捕、送検され、鑑定留置中だ。 健二さんが納得できないのは、男の行為が「事故」として扱われたことだ。現場を訪れると「娘を失ったつらさを感じる」という。それでも当時の状況を確かめようと、同じ深夜帯に繰り返し足を運び、通行人を調査。繁華街に近く明るい歩道で、1時間45分の間に約300人が行き来するのを確認した。 健二さんは勾留先の警察署で男と3回接見した。「下に人がいようがいまいが、死のうが死ぬまいが構わないと思って飛び降りたのか」。問いただすと、男は「そうです」と答えたという。健二さんは、他人が死亡する可能性を認識していた「未必の故意」があったと訴える。 オンライン署名サイト「change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」で募ると、4万6000筆以上が集まった。名古屋地検には28日、殺人罪での起訴などを求める意見書とともに集まった署名を提出する予定だ。 「娘は身勝手な絶望の身代わりになったのではありません」。健二さんは署名文に、同様の被害を繰り返さないため警鐘を鳴らすことが「親として、奪われた娘の未来のためにできる最後の仕事」だとつづっている。