名古屋市で7月、マンションから飛び降りた男の巻き添えとなり、女性=当時(23)=が死亡した。一命をとりとめた男は重過失致死容疑で逮捕されたが、遺族は過失ではなく殺人罪での起訴を求めており、28日に署名を名古屋地検に提出する。同様の事件は後を絶たないが、飛び降りた側も死亡し、殺意の立証が困難なケースが大半を占める。容疑者が生存している今回は、飛び降りた際の認識が焦点となる。7月19日午前1時ごろ、名古屋の繁華街・栄のマンション11階ベランダから29歳の男が飛び降り、歩いていた近所の稲葉朋来(ほうら)さんが巻き込まれて死亡。男は一時意識不明となったが回復し、愛知県警が8月に重過失致死容疑で逮捕した。現在、刑事責任能力を調べるための鑑定留置中で、結果を踏まえて名古屋地検が刑事処分を決める。稲葉さんの父、健二さん(50)は「過失によるただの不幸な事故ではない」と語気を強める。死亡する可能性を認識しながらそれでも構わないと行動する「未必の殺意」が男にあったとして、殺人罪での起訴を求めるオンライン署名を9月に開始。これまでに集まった約4万7000筆を提出し、今後も活動を続ける。飛び降りの巻き添え死には、重過失致死容疑が適用されることが多い。近畿大の辻本典央教授(刑法)によると、殺人罪の成立には「飛び降りたら確実に人に当たる状況」で、かつ「その危険性を認識していたこと」の立証が求められる。過去のケースのように容疑者が死亡していれば認識の立証は困難だが、今回は健二さんが警察署で男と接見。「(下の人が死んでも)構わないと思って飛び降りたのか」と問うと、男は「そうです」と答えたという。辻本氏は男の発言を重要視し、「他人が死ぬ可能性を認識しつつも『それが起きてほしくない』と考えていたのか、死ぬ結果を受け入れる気持ちまであったのか。真意の見極めが必要だ」と指摘している。(安田麻姫)