Deepa Seetharaman[サンフランシスコ 3日 ロイター] – 米人工知能(AI)開発企業オープンAIが10月、役員会議室に録音機器が仕掛けられていたことを明らかにした際、多くの元従業員は同じ反応を示した。驚かなかったのだ。関係者5人によると、同社が2022年後半に生成AI「チャットGPT」を公開する前から、一部の従業員はセキュリティー対策について内部で懸念の声を上げ、従業員らはその懸念を最高幹部や取締役会に伝えた。しかし一部従業員はそのやりとりから、経営陣がセキュリティーよりもグーグルやアンソロピックなど競合他社に遅れを取らないことを重視していると感じたという。これらの従業員は、オープンAIの管理体制があまりに緩く、外国政府を含む外部の者が技術に関する機密情報を比較的容易に入手できると主張した。例えば、社内でコードにアクセスできる者は誰でも、多くのプロジェクトの技術的詳細を閲覧することができた。関係者によると、同社はセキュリティー問題に対処するため戦略転換に着手した。製品開発を統括する上級幹部ティボー・ソティオー氏が、内部システム保護の指揮を執ることになったという。だがセキュリティー保護の層を厚くすれば、AI技術の進展は遅れる可能性があり、オープンAIやアンソロピックが計画する大型の新規株式公開(IPO)にも影を落としかねない。今年4月にオープンAIを退職した元研究者のウィル・デピュー氏は「X」への投稿で、競争が激烈なためAI企業幹部らは「セキュリティーのために速度を犠牲にすることはできない。彼らにとってはセキュリティー確保より素早く動くことの方が重要だ。最大の敵国から身を守ることよりもだ」と記した。オープンAIの広報担当者エラナ・ウィドマン氏は、同社は世界で最も標的にされている組織の1つだとし、内部関係者、サイバー犯罪者、国家による攻撃から身を守るためセキュリティープログラムに多額の投資を行っていると説明。「技術と脅威の進化に伴い、防御を強化し続けていく」と述べた。<機密情報に広くアクセス>米司法省は10月13日、オープンAIの役員会議室のトイレットペーパーに隠した録音機器を設置した疑いでサウジアラビア国籍の同社元エンジニアの男(35)を逮捕・訴追したと発表した。裁判所の提出書類によると、男はまた、従業員向けのAIツールを使用して、サウジを訪問する幹部に関する内部資料などを検索していた。男はサウジ王族と定期的に連絡を取り合っており、この王族は男をサウジの新たなAI事業に勧誘していた。一部の従業員は何年も前から、オープンAI内部で情報に広くアクセスできることに懸念を抱いていた。社内でコードにアクセスできれば、自身の業務とは無関係な機密性の高いものを含めてプロジェクトの詳細を閲覧できたのは、同社が「モノリポ」と呼ばれる単一のコード保管場所に大部分のコードを保存していたからだと関係者は語る。モノリポは大量の資料を含み、複雑だったため過去には攻撃者を思いとどまらせていた可能性があるが、現在ではAIエージェントで精査できるという。関係者5人によると、オープンAIはかつて研究文書の多くをギットハブ(GitHub)やスラック(Slack)に保管しており、攻撃者がその気になれば重要情報を発見する可能性があるとの懸念が、一部の従業員から上がっていた。ただ、関係者1人とオープンAIは、現在は同社が機密性の高い作業へのアクセスを制限していると説明した。関係者らによると、オープンAIのもう1つの問題は、研究者が新しいモデルのストレステストを行う「サンドボックス」など、内部ツールの定期的なセキュリティーレビューを行っていなかったことだ。同社は、2024年10月に入社したデーン・スタッキー最高情報セキュリティー責任者(CISO)の下で、強固なセキュリティー対策を講じていると説明。現在は社内ツールの定期的なセキュリティーレビューを実施していると述べた。