衝撃の「5試合消滅」報道…韓国ゴルフ界に漂う“暗雲”と広がり続ける“日本ゴルフ界との実力差”

’25年シーズンの日本女子プロゴルフ(JLPGA)ツアーの日程は昨年と同じ37試合で実施されることが発表され、3月の開幕戦『ダイキンオーキッドレディス』に向けて選手たちは、それぞれが充実したオフを過ごしているところだろう。 そんな日本ツアーでは今も数人の韓国人選手がプレーしているが、彼女たちがプロデビューした母国の韓国女子プロゴルフ(KLPGA)ツアーもシーズン開幕前からメディアをにぎわせている。特に大手企業が人気選手たちと次々と契約を結び、ファンに向けて大々的にアピールしている。 韓国コスメ好きにはよく知られているスキンケアブランドの「メディヒール」は、昨年の年間ポイントランキング2位のパク・ヒョンギョン(25)、同4位のイ・イェウォン(21)と新たにメインスポンサーとなる所属契約を結んだ。パクは強さとかわいらしさも相まって、ツアー屈指の人気を誇り、イ・イェウォンもツアー人気を牽引する選手の1人。イは昨年の日本ツアーメジャーの『ワールドレディスチャンピオンシップサロンパス』で初出場3位に入ったことでも話題となった。そんな2人を新たに迎え入れた「メディヒール」は、その資金力で優勝経験のある所属選手を11人も抱えて‘25年シーズンをスタートさせる。 さらにエネルギー事業を展開する「三千里」も才能豊かな新人たち11人と所属契約を結んでいる。また、日本でも“次世代クイーン”と騒がれた容姿端麗のユ・ヒョンジュ(30)、“ゴルフ界のバービー人形”と呼ばれるパク・キョル(29)ら6人は建設会社「斗山建設」の所属となった。それぞれの企業所属の選手たちが’25年に向けた決意とともに、さまざまなポーズをとる集合写真は圧巻の一言で、ゴルフファンが開幕前からツアーの盛り上がりに期待を寄せるのも無理もない。 ただ、そんな派手な演出よりも気になるのが、今季の韓国ツアーに起こりそうな“大変革”だ。まだ今季の韓国ツアーの日程は発表されていないが、経済紙『ヘラルド経済』が伝えたのは、「5試合が消滅する」という衝撃のニュースだった。 ◆大統領逮捕がツアー数にも影響 「今季のKLPGAツアーはすでに5大会が取り消しになったと報じられたんです。大会開催中止を公式発表しているメジャーの『ハンファクラシック』を筆頭に、『ハナ金融グループ シンガポール女子オープン』、『キョチョンレディスオープン』、『セルトリオンクイーンズマスターズ』、『SKテレコム-SKシールダスチャンピオンシップ』が、今季から大会開催しないことをKLPGAに伝えたとか。ここに『メッコール・モナ龍平オープン』、『OK貯蓄銀行ウッメンオープン』も大会を継続すべきか悩んでいるといいます」(在韓新聞のスポーツ部記者) もしかすると7試合が一気に消滅する可能性があるのというのだから驚きだ。その要因について同紙は「韓国経済の停滞と不景気」と指摘している。非常戒厳による尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の逮捕などの影響で、韓国経済が深刻な危機に陥っているのが最も大きな原因だという。 韓国ツアーは一部の大企業が国内選手を囲い、表向きには活気のあるツアーに見えるが、選手の働く場所が減っては元も子もない。とはいえ試合が減っても、新たな企業がトーナメント開催に手を挙げることも考えられるため、日程発表まではなんとも言えない状況が続いている。それでも韓国発のゴルフ関連ニュースを見る限りでは、苦境に立たされているのは間違いないようだ。 韓国ゴルフ界の“厳しい状況”といえばもう一つある。それは今季の米ツアーに日本の選手たちがこぞって参戦することで、韓国ゴルフ界が今までにない“危機”を感じていることだ。 ◆日本が黄金期の一方で…… 昨年の米女子ツアーの最終予選会を吉田優利(24)、山下美夢有(23)、岩井千怜、岩井明愛(ともに22)、馬場咲希(19)の5人が突破。昨季の年間女王の竹田麗央(21)も日本開催の米ツアー「TOTOジャパンクラシック」優勝で米ツアー行きの切符を手に入れた。 さらに今季米ツアーシード選手の古江彩佳(24・昨季メジャーのエビアン選手権で優勝)、笹生優花(23・昨季2度目となる全米女子オープン制覇)に加え、渋野日向子(26)、畑岡奈紗(26)、勝みなみ(26)、西村優菜(24)、西郷真央(23)が加わって13人。これは歴代最多でまさに黄金期を迎えようとしている。それを受け、韓国経済紙『アジア経済』は 〈今季は米女子ツアーで旋風を起こす勢いだ。日本の勢いは恐ろしい。日本の女子ゴルフは、量と質においても世界でゴルフ界を席巻する準備を終えた〉 と警鐘を鳴らした。 ここ数年、韓国勢は米女子ツアーでの勝利が少なく、昨季は2勝(ユ・ヘランとエイミー・ヤン)しかできなかったことで、“ゴルフ強国”のプライドはへし折られた。近年は韓国ツアーの試合数が増え、賞金額も増加するなど環境の充実で、選手たちの海外挑戦に歯止めがかかった。ハングリー精神を失い、海外に出なくなった選手が増えたことも米ツアーでなかなか勝てなくなった一因といわれている。 今季は米ツアー参戦の日本の選手たちから、続々と優勝者が誕生するかもしれない。参戦1年目の選手は移動や食事、時差など連戦に慣れるまでには時間がかかるものだが、それでも米ツアーで大暴れする可能性も大いにある。とはいえ、韓国勢もこのまま黙っているわけにはいかないだろう。米ツアーでの“ゴルフ強国”復権もそうだが、韓国内の企業に向けてはトーナメント開催へのメリットを選手たちがプレーでアピールする必要がある。 日本と韓国の女子ゴルフ界の状況が逆転しつつある今、その行方を今後も注視していきたい。 取材・文:金明昱(キム・ミョンウ)

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