金正恩委員長のロシア派兵に怒った中国、「北送事務所」設置

ロシアに派兵された北朝鮮軍が戦場に投入されるなど戦争への直接関与が高まる中、中国も北朝鮮労働者の取り締まりなど対北朝鮮圧力を強化していることが21日、把握された。中国当局が北朝鮮国籍者に対する長期滞留ビザ発行を制限し、国境地域にはビザがない北朝鮮労働者を組織的に送還するための「北送事務所」まで設置した。 複数の対北朝鮮情報筋によると、中国は朝中間の最大貿易拠点である遼寧省丹東地域に「北送事務所」を設置した。合法的なビザがなかったりビザが満了となった北朝鮮労働者を集中的に取り締まり、速かに本国に送還するのが事務所設置の目的だ。 ある消息筋は「中国政府は最近、北朝鮮人の常駐人員を新規で派遣すること自体を許可していない」と伝えた。このため北朝鮮と数百人単位の労働者派遣契約を終えた中国企業が新たな労働者の供給を受けられずにいる。中国内の北朝鮮通商代表部も新規の幹部派遣が不可能で、従来の人員を本国に帰した後、後任者が入っていない状況という。 取り締まりの強度は人員派遣の制限を越え、中国に滞在する北朝鮮国籍者の営業行為を制限するレベルに達している。最近、中国は自国内のすべての地域で北朝鮮国籍者の会社(法人)登録を許可せず、従来の会社には銀行口座を凍結した。このため北朝鮮当局と貿易会社は一部の事業体をロシアに移すことを検討中というのが、情報筋の説明だ。 中国は税関での対北朝鮮密輸取り締まりも強化した。別の対北朝鮮情報筋によると、中国税関は昨年11月以降、北朝鮮に搬出される物資を大幅に制限し、高い関税も適用している。以前には中国国内の北朝鮮常駐代表が帰国する際、電子製品を平均5個まで搬入できたが、最近は物品検査が強化され、個人物品の搬入自体がほとんど中断されたという。 特に丹東税関は「北朝鮮に戻る人たちの荷物から対北朝鮮制裁物資が繰り返し摘発される」という理由で、昨年10月末以降、荷物の通関を一時的に中断したりもした。現地では国境地域で中国税関の取り締まりが厳しくなると、航空便を利用した帰国の需要が増え、北朝鮮当局が近く中国を往来する航空便を増便するという噂も広まっているという。 こうした取り締まりの強化で従来の密輸ルートも直撃弾を受ける雰囲気だ。情報筋は「朝中間の内陸貿易拠点の長白-恵山(ヘサン)および臨江-中江(チュンガン)の一帯で対北朝鮮密輸業者が次々と逮捕されるなど取り締まりが強まった」とし「長白と臨江では仕事のない密輸車があちこちに駐車されている状況がよく目撃されている」と伝えた。 このように中国が以前とは違い制裁回避など北朝鮮の不法行為を黙認しない「合法的圧力」を強化するのに対し、北朝鮮も反発する雰囲気だ。最近平壌(ピョンヤン)では若い女性の韓国風ヘアスタイルだけでなく中国風ヘアスタイルまで取り締まるという噂が広まっているという。中国に派遣された北朝鮮の「貿易労働者」の間でも「中国がロシアに派兵した金正恩を教育している」という声が出ているという。 実際、朝中間の亀裂の兆候は公開的にも捕捉されている。昨年75周年を迎えた「朝中親善の年」は閉幕式も開けず竜頭蛇尾の形で幕を下ろした。北朝鮮国営朝鮮中央通信のインターネットサイトに見られた「朝中親善の年」特集ページにつながる記念バナーは、ロシアとの密着を強調する「歴史的転換期を迎えた朝ロ親善関係」バナーで置き換えられた。 中国海関総署が18日に発表した2024年の朝中貿易額が前年(22億9500万ドル)比で5%近く減少した21億8000万ドル(約3400億円)となったのも、中国が北朝鮮と距離を置いていることの傍証と考えられる。 慶南大極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「北のロシア派兵が自国の安保を不安定にさせる要因になり得るという中国の危機感が反映された動き」とし「中国の対北朝鮮レバレッジが大きく縮小したことを傍証する側面もあるだろう」と話した。

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