ロシアの軍事侵攻に抗戦する一方、国内に蔓延する汚職が長年問題となっているウクライナを支援する日本政府が3月をめどに、ウクライナの贈収賄防止法制の確立に向けた具体案をまとめる。「法の支配」を広めるため、これまで東南アジアを中心に展開してきた「司法外交」を欧州にも拡大する第一歩。法整備支援の分野で世界をリードしたい考えだ。 ■EU加盟にも支障が 昨年12月23日、ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使と鈴木馨祐法相が都内で会談に臨んだ。 テーマの一つはウクライナの汚職対策だ。日本の提唱で先進7カ国(G7)が「ウクライナ汚職対策タスクフォース」を設置。昨年11月にはウクライナの検察当局者を招いたタスクフォースの会合が都内で開催され、12月には法務省がウクライナの司法副大臣を招いて汚職対策法制を議論していた。 法務省は会合での協議内容も踏まえ、今年3月までに結論をまとめる方針という。 ウクライナは、ロシアによる侵攻が始まった直後の2022年2月、欧州連合(EU)への加盟を申請。だが汚職対策がネックとなり交渉は進んでいない。ウクライナからのSOSを受けて、日本が「助け舟」を出したかっこうだ。 ■30年の歴史 司法外交は、法の支配の価値を世界中に行き渡らせるための取り組み。国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)には「すべての人々に司法へのアクセスを提供」することも盛り込まれており、達成への貢献を通じて国際社会での日本の存在感を高める目的もある。 そんな司法外交の根幹を成すのが、昨年で開始から30年の節目を迎えた、法務省が進める法制度整備支援だ。 犯罪白書によると、法務省は平成6年のベトナムを皮切りに、アジア各国の法制度の整備を支援。司法外交を進めてきた歴史がある。 今回のウクライナへの汚職対策分野での支援は、日本流の司法外交を、アジアだけでなく欧州にも展開する第一歩とも位置付けられる。 ■海外汚職摘発で実績