2作連続で米アカデミー賞作品賞候補になった「スリー・ビルボード」「イニシェリン島の精霊」の脚本・監督で知られ、今や英語圏を代表する映画作家として君臨するロンドン出身のアイルランド系イギリス人マーティン・マクドナー。彼がキャリア初期に発表した戯曲『ピローマン』が、東京・初台の新国立劇場で上演中である。演出は小川絵梨子。同劇場の芸術監督でもある彼女が、おそるべき猟奇性、情熱、狂気、死生観が乱反射するこの衝撃作を、今回どのように仕上げているか興味は尽きない。キネマ旬報ベスト・テンで「スリー・ビルボード」はみごと2018年の1位、「イニシェリン島の精霊」も2023年の6位に輝いている。マーティン・マクドナーのもうひとつの顔である劇作家としての代表作を、映画評論家・荻野洋一が詳細にレビューする。