アメリカのドナルド・トランプ大統領は6日、国際刑事裁判所(ICC)を制裁対象とする大統領令に署名した。ICCについて、「アメリカと、私たちの親密な同盟国であるイスラエルを標的にした非合法で根拠のない行動」をとってきたと非難した。 この大統領令では、アメリカや同盟国の国民に対するICCの捜査に協力する個人とその家族に対し、経済活動やビザ(査証)の制限を課す。 ICCは昨年11月、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に、パレスチナ・ガザ地区での戦争犯罪の疑いで逮捕状を発行した。イスラエル側は容疑を否認している。ネタニヤフ氏は現在、ワシントンを訪れている。 ICCは、ガザでイスラエルと戦闘してきたイスラム組織ハマスの司令官に対しても逮捕状を出している。 ホワイトハウスはこの日、オランダ・ハーグが本部のICCについて、ハマスとイスラエルに対して同時に逮捕状を発行し「恥ずべき道徳上の同等性」をつくり出したと非難する文書を出した。 大統領令は、ICCの最近の行動がアメリカ人を「嫌がらせ、虐待、逮捕の可能性」に直面させ、危うい立場に置く「危険な前例となっている」と説明。 「この悪質な行動は、アメリカの主権を侵害する脅威となっており、米政府と、イスラエルを含む同盟国の、重要な国家安全保障と外交政策を損なっている」とした。 また、「両国(アメリカとイスラエル)とも繁栄している民主主義国であり、その軍隊は戦争法に厳格に従っている」とした。 アメリカはICCに加盟しておらず、自国の当局者や国民に対するICCの管轄権を否定し続けている。 ■大統領1期目にも制裁 トランプ氏はICCを繰り返し批判している。第1次政権では、米軍がアフガニスタンで戦争犯罪を犯した疑いについて調べていたICC職員に制裁を課した。この制裁は、ジョー・バイデン大統領によって解除された。 米議会では下院が先月、ICCに対する制裁法案を可決した。だが、上院はこれを通さなかった。 ICCは2002年、ユーゴスラビアの崩壊とルワンダでの集団虐殺のあと、残虐行為について調べるために設立された。国内当局が起訴できない、あるいはしようとしない場合にのみ介入する、最後のよりどころとしての裁判所となっている。 設立条約のローマ規程には120カ国以上が批准。さらに34カ国が署名しており、今後批准する可能性がある。 アメリカもイスラエルも、ローマ規程には署名していない。 バイデン政権も、ネタニヤフ氏に対するICCの逮捕状を「言語道断」と批判し、イスラエルとハマスの間に同等性はないとしていた。 ■ガザ再建構想について投稿 トランプ氏はこの日、アメリカがガザを「引き取り」、パレスチナ人を移住させて「中東のリヴィエラ」にするという自らの構想について、自身のソーシャル・メディア「トゥルース・ソーシャル」に新たに投稿。「ガザ地区は戦闘の終結時に、イスラエルからアメリカに引き渡される」とした。 また、この計画にはパレスチナ人の再定住が含まれると繰り返し説明し、米兵が派遣されることはないとした。 トランプ氏の投稿は、移住させるとしているガザ地区の住民200万人がガザに戻るのか、明らかにしていない。そのため、政府関係者は説明に追われている。 ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は5日、パレスチナ住民の移住は一時的なものだと述べた。マルコ・ルビオ国務長官は、再建が行われる「暫定的」な期間だけ、ガザを離れることになるとした。 他方、ネタニヤフ氏は今回の訪米で、トランプ氏に黄金のポケベル型通信器を贈った。イスラエルが昨年9月、レバノンで同国のイスラム教シーア派組織ヒズボラに対して実行した、小型通信機機を使った作戦にちなんだものだった。この攻撃では数十人が殺害され、数千人が負傷した。 イスラエルはこの作戦について、イランの支援を受けているヒズボラのメンバーだけを攻撃するように計画されていたとした。だがレバノン当局は、犠牲者の中には民間人も含まれていたとしている。 (英語記事 Trump sanctions International Criminal Court, calls it 'illegitimate')