エクアドル大統領選の一次投票が今週末9日に迫り、国内情勢が緊迫している。現職のダニエル・ノボア大統領は再選を目指しているが、18カ月の任期中に治安の悪化、エネルギー危機、経済成長の停滞といった課題に直面し、米国との移民問題への対応も重要な争点となっている。ノボア氏への国民の評価は分かれており、対立候補のルイサ・ゴンサレス氏は元大統領のラファエル・コレア氏の影響を色濃く受けた左派路線を打ち出し、選挙結果は国内外の注目を集めていると6日付ヴァロール紙などが報じている。 ノボア大統領は、2023年11月の予備選挙を経て大統領職に就任した。治安悪化が深刻で犯罪組織の活動が活発化し、都市部では暴力が日常化している。エルサルバドルのブケレ大統領と同様の強硬手法を採用し、大量逮捕などを行ったことで殺人件数は若干減少したが、カルテルは刑務所内からも「恐怖の支配」を広げている。 エネルギー危機も深刻で、24年には度重なる停電が発生し、企業活動や市民生活に大きな影響を与えた。経済はさらに悪化し、失業率の上昇や企業の倒産が相次ぎ、国民の不満は高まっている。ノボア政権はこれらの課題に対してエネルギーインフラの改善策を講じ、復旧作業に取り組んでいるが、成果が見えるまでには時間がかかると見込まれている。 同国経済は低成長で24年成長率は0・8%とみられる。失業問題が深刻で、企業の閉鎖や大規模倒産が続いており、新たな雇用創出が急務だ。ノボア政権は税制改革を実施し、財政赤字減少と財政健全化を進めたが、景気回復の兆しは見えない。増税が国民に与える負担は大きく、特に中小企業や低所得者層からの反発が強い。 一方で、対立候補であるルイサ・ゴンサレス氏は、コレア元大統領の左派的な経済政策を継承し、福祉充実を訴える。彼女は改革を求める層に強くアピールしており、特に貧困層や労働者層からの支持を得ている。だが、コレア政権下で行われた政策に対して批判的な声も多いとの指摘もある。 イプソス社の最新世論調査によれば、ノボア氏の支持率は45・5%で、ゴンサレス氏が31・3%で続く。両者は23年の前回選挙で対決しており、ゴンサレス氏が第1回投票で勝利したものの、決選投票でノボア氏が巻き返して勝利を収めた。 次期大統領は国内の問題に加え、トランプ米大統領との対応も避けて通れない。特に貿易や国際協力の分野で問題が生じる恐れがあり、エクアドルは中国と密接な商取引を行っていることで、米国との間で貿易競争が激化する可能性が高い。トランプ氏が推進する貿易戦争や関税の引き上げにより、エクアドルは米国市場での競争力を失い、関税優遇協定の進展が難しくなる可能性がある。 米国がエクアドルへの国際支援を削減するリスクも存在し、特に国際通貨基金(IMF)などの多国間機関による政策が強化されると、エクアドルの財政に深刻な影響を与える可能性がある。 エクアドルのドル経済は、トランプ政権によるドル強化政策によって競争力を失う恐れがあり、輸入品に対する競争力が低下することが懸念される。 ノボア大統領は、早期の決着を目指して第1回投票で50%以上を獲得したい考えだが、対立候補はその実現を防ぐことを目指しており、選挙戦の行方は予断を許さない状況が続いている。