ジェイムズ・ウォーターハウス・ウクライナ特派員(キーウ)、マイア・デイヴィーBBC記者 ウクライナ戦争終結を目指してアメリカとロシアが行う会談に、ウクライナは招待されていないと、ウクライナ政府の高官がBBCに語った。 アメリカのキース・ケロッグ・ウクライナ特使は、17日にサウジアラビアで行われる会談にウクライナが参加すると述べていたが、情報筋によると、ウクライナの代表団は出席しないという。 欧州首脳も協議に招かれていない。17日にはフランスのエマニュエル・マクロン大統領が急きょ招集したパリでの欧州首脳会議に、各国首脳が集まる予定。そのため、ウクライナに関する和平交渉から欧州締め出されることへの懸念が高まっている。 ドナルド・トランプ米大統領は12日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会談を行なった。米ロの首脳が直接接触するのは3年ぶりだった。 アメリカがこの1週間で、ウクライナでの戦争に対するアプローチを大幅に変更すると示唆したことで、この戦争について新たな波乱が生じている。 ホワイトハウスのスティーヴ・ウィトコフ中東特使は、ウクライナでの戦争終結に向けた初の対面での米ロ会談のため、16日夜にサウジアラビアへ向かうと認めた。 トランプ米大統領は16日、ウィトコフ特使がすでにプーチン大統領と「かなり長いこと、3時間くらい」すでに会談したことを明らかにした。 不動産開発業者で大富豪のウィトコフ氏はトランプ氏と親しく、大麻の不法所持で逮捕され有罪となったアメリカ人受刑者の釈放と帰国のため今月中旬にモスクワを訪れていた。 マルコ・ルビオ米国務長官とマイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)も、サウジアラビアでロシアの交渉担当者と会談する予定。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、自国抜きでアメリカとロシアが和平合意を結ぶことは受け入れないと、繰り返し警告している。16日にも米NBCニュースに対し、「アメリカとロシアがウクライナについて決定されることなど一切、決して受け入れない」と述べた。 ウィトコフ特使は、アメリカ当局がウクライナ当局と個別に話し合っており、それが「会談の一部」だと述べたものの、ウクライナ政府関係者がサウジアラビアでの会談に出席するかについては言及しなかった。 トランプ大統領は16日にフロリダで記者団に対し、ゼレンスキー大統領が会談に参加するだろうと述べた。また、ヨーロッパ諸国がウクライナのためにアメリカ製武器を購入することを許可すると述べた。 和平交渉が実を結び戦闘が終結するのはいつ頃だと思うかとBBCが質問すると、トランプ氏は「その実現に向けて取り組んでいる」と答えるにとどまった。また、ウクライナでの戦争の責任はジョー・バイデン前政権のウクライナ政策にあると批判した。 一方ルビオ国務長官は、サウジアラビアでの会談について、1回きりの会談で戦争が解決するわけではなく、ウクライナ、ロシア、第三者の間を仲介する正式な交渉プロセスはまだ設定されていないと述べた。 しかし長官はCBSニュースに対して、今後数日間が、プーチン大統領に平和実現の意思があるのかどうかを判断するための、重要な期間になると語った。 ■英・欧州指導者はパリで会合へ こうしたなか、イギリスのキア・スターマー首相、北大西洋条約機構(NATO)のマーク・ルッテ事務総長、ドイツのオラフ・ショルツ首相、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長を含むヨーロッパの指導者たちが、パリで緊急会合を開く。 マクロン仏大統領はさらに、同日午後にウクライナと、ヨーロッパの安全保障について非公式の会合を開く予定だ。 サミットに先立ちスターマー首相は、イギリスが「必要であれば自国の軍隊を派遣する」ことで、ウクライナの安全保障を保証する準備があると述べた。 英紙デイリー・テレグラフへの寄稿でスターマー氏は、ウクライナに持続的な平和を確保することが、「プーチンが将来的にさらに侵略を開始するのを、我々が抑止するために不可欠だ」と述べた。 アメリカのウクライナ特使ケロッグ氏は15日、サウジアラビアに欧州の指導者らが招待されなかったことに対する懸念を一蹴し、以前の交渉は、かかわる当事者が大勢いすぎたせいで失敗したと主張した。 「チョークで黒板に書くみたいに少し耳障りかもしれないが、私は本当に正直なことを言っている」とケロッグ特使は述べた。 一連の会談は、この戦争を迅速に終結させようとするトランプ大統領の動きに拍車をかけるものだ。 トランプ氏は12日にプーチン大統領と電話協議をした後、戦争終結の実現について「かなりの可能性」があると表明した。一方で、ウクライナがNATOに加盟するのは「現実的」ではないとした。また、ウクライナが、同国南部クリミアをロシアに一方的に併合された2014年以前の国境に戻れる「可能性は低い」とも述べた。 ウクライナは繰り返しNATO加盟を求めており、和平合意の一環として領土を譲渡することを拒否している。 ピート・ヘグセス米国防長官もトランプ大統領の姿勢を繰り返しており、アメリカが和平合意交渉より先にすでにロシアに譲歩しているのではないかというヨーロッパの懸念をあおっている。 ヘグセス国防長官はまた、ヨーロッパ諸国がウクライナへの資金提供の「圧倒的な」割合を負担すべきだと述べ、アメリカはもはや同盟国との「不均衡な関係」を「容認しない」と主張した。 アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領も、14日にミュンヘン安全保障会議で行った演説で、ヨーロッパは「自国の防衛のために大きく踏み出す」必要があると述べ、その演説の大部分をヨーロッパの民主主義を批判することに費やした。 ゼレンスキー大統領は15日、大陸はもはやアメリカに頼ることができないと主張し、欧州軍の創設を呼びかけた。 一方、ウクライナでの戦争は16日も続き、ゼレンスキー大統領はロシアの攻撃により、南部ミコライウで停電が起き、少なくとも10万人に影響が受けたと述べた。 また、ドローン(無人機)攻撃によって市の「重要インフラ」が被害を受け、住宅が暖房を失ったと語った。 ロシアは2022年2月24日にウクライナへの全面侵攻を開始。2014年には、クリミア半島と東部ドンバス地域の一部を不当に併合している。 (英語記事 Ukraine not invited to US-Russia peace talks, source tells BBC)