亜鉛と銅の合金「真ちゅう」を盗品であると知りながら買い取ったとして、兵庫県警国際捜査課と捜査3課、姫路署などは20日、盗品等有償譲り受けと組織犯罪処罰法違反の疑いで、いずれも中国籍で、金属買い取り会社役員の男(65)=神戸市西区=と同社員の女(37)=同=を逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。金属盗の被害が急増し、国は買い取り業者への規制強化に動いている。 捜査関係者によると、2人は共謀して2024年9月24日、神戸市西区にある同社敷地内で、真ちゅう約1トンを盗品と知りながら、82万3200円で買い取った疑いが持たれている。 県警は昨年10月、三木市にある金属加工会社から真ちゅう約1トンを盗んだとして、窃盗などの疑いでベトナム国籍で住所不定無職の男2人=公判中=を逮捕しており、男らは真ちゅうを会社役員の男の会社で売却したと説明していた。 捜査関係者への取材では、男らの供述や押収した資料などから、男らは少なくとも昨年4月~9月に約80回にわたって、銅や真ちゅう計約60トン(約6千万円相当)を持ち込んでおり、県警は会社役員の男らが盗品と知りながら、いずれも買い取っていた可能性が高いとみて調べるという。 捜査関係者によると、会社役員の男の会社は金属くず商の許可を受けており、県警は金属類の盗犯防止を目的に作られた県金属くず営業条例違反の疑いも含めて捜査する。 ◇ ◇ ■金属盗の被害急増、4年前の5倍 兵庫県内では銅などの価格高騰を背景に、金属盗の被害が急増している。県警によると、2024年の認知件数は、4年前の5倍近くにまで伸びており、全国的にも同様の傾向という。被害に歯止めをかけるため、国は買い取り業者に対する法規制の検討を始めた。 県警によると、グレーチング(側溝のふた)や資材置き場の鉄板などが被害に遭う金属盗は、20年の112件から、24年は539件に増えている。このうち、太陽光発電所の電線ケーブルが狙われるケースが86件と2割近くを占めている。 警察庁は今年1月、専門家らが金属盗の現状や対策をまとめた報告書を公表。背景には、電気自動車(EV)の駆動モーターに必要な銅や、製鉄の工程で二酸化炭素の排出量を大幅に低減できる鉄くずの需要の高まりがあるという。 兵庫など17道府県は、買い取り業者に取引時の本人確認を求めるなど金属くずに関する条例を制定しているが、報告書では罰則の軽さなどを指摘。買い取り業者を届け出制にする▽取引時に盗品の疑いがある場合に警察への申告を求める▽専用の切断用工具を隠し持つことを処罰対象にする-といった対策の強化を提言した。 警察庁は報告書の提言を基に、買い取り業者への規制を強める法整備を検討しているという。