3月罷免、5月大統領選「不幸なデジャヴ」…繰り返される歴史から学ぶべきこと

「歴史は繰り返される。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」。カール・マルクスが残した言葉です。 実に不思議です。私たちは8年前に朴槿恵(パク・クネ)大統領を弾劾し、早期に大統領選挙を行いました。直前の大統領選挙の敗北者だった文在寅(ムン・ジェイン)大統領が当選しました。 私たちは今や尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を弾劾し、早期の大統領選挙を行うでしょう。当選する可能性が高いのは、直前の大統領選挙の敗北者だったイ・ジェミョン代表です。 立場によって悲劇ととらえる人もいるでしょうし、喜劇ととらえる人もいるでしょう。いずれにせよ、「歴史は繰り返される」という命題を否定することは困難です。 日程すら似ています。「12月弾劾訴追」からはじまって「3月罷免」、「5月早期大統領選挙」、「政権引き継ぎ期間なしに直ちに大統領就任」に至るまで、そっくりです。 温故知新と言います。古きをたずねて新しきを知らなければなりません。2017年を振り返り、2025年を展望してみましょう。 1.没落 朴槿恵大統領は、2012年12月の大統領選挙で3.53ポイント差で勝利しました。辛勝でした。2014年4月16日にセウォル号が沈没しました。ずさんな対応は政権没落のシグナルとなりました。それでも、2014年の6・4地方選挙の結果は悪くありませんでした。17ある特別市・広域市長と道知事のポストのうち、セヌリ党は8つを獲得しました。仁川(インチョン)市長がユ・ジョンボク、京畿道知事がナム・ギョンピル、済州道知事がウォン・ヒリョンとなりました。 2016年の4・13第20代総選挙で事故が起きました。朴槿恵大統領が候補公認に深く介入しました。「親朴鑑別士」が登場しました。キム・ムソン代表の「玉璽を持って高飛び」騒動が起きました。総選挙の結果は民主党123議席、セヌリ党122議席でした。 国会議長のポストが野党に渡りました。2016年9月20日、ハンギョレが「チェ・スンシルのミル財団-Kスポーツ財団不正」を報道しました。複数のメディアが後続報道しました。政権の崩壊がはじまりました。 尹錫悦大統領は2022年3月9日の大統領選挙で0.73ポイント差で勝利しました。辛勝でした。しかし6月1日の地方選挙では圧勝しました。17の特別市・広域市長と道知事のポストのうち12を獲得しました。ソウル市長がオ・セフン、仁川市長がユ・ジョンボクとなりました。大田(テジョン)、世宗(セジョン)、忠清南道、忠清北道も獲得しました。 2022年10月、梨泰院(イテウォン)惨事が起きました。ずさんな対応は政権没落のシグナルとなりました。キム・ゴンヒ女史は当初から尹錫悦大統領の弱点でした。ドイツモーターズ事件の手抜き捜査、ブランドバッグ受け取り、候補公認介入疑惑など、雑音が絶えませんでした。 2024年の4・10第22代総選挙で事故が起きました。尹錫悦大統領は「長ネギ875ウォン発言」、「逃走大使任命問題」で野党に勝利を上納しました。総選挙の結果は民主党175議席、国民の力108議席でした。政権の崩壊がはじまりました。 2.弾劾 JTBCが2016年10月24日に、チェ・スンシルのタブレットPC事件を報道しました。朴槿恵大統領を弾劾せよとの世論が強まりました。国会は12月9日の本会議で弾劾訴追案を可決しました。在籍議員300人中234人が賛成、56人が反対しました。 憲法裁判所は1月3日から2月27日までに17回の弁論を行いました。弁論終結の11日後の3月10日に8対0、裁判官の全員一致で朴槿恵大統領は罷免されました。朴槿恵大統領は3月12日に大統領府を退去し、三成洞(サムソンドン)の自宅に戻りました。 検察は3月21日に朴槿恵大統領を出頭させ、3月27日には拘束令状を請求しました。朴槿恵大統領は3月31日に拘束されました。検察の捜査が憲法裁判所による罷免決定後に行われたのは、大統領が不訴追特権を持っているからです。 尹錫悦大統領は総選挙での惨敗を現実として受け止められませんでした。12月3日、「従北反国家勢力を一挙に清算」するとして、非常戒厳を宣布しました。政治家の逮捕を指示しました。国会議員たちを本会議場から引きずり出せと指示しました。内乱でした。 国会は12月14日の本会議で弾劾訴追案を可決しました。在籍議員300人中204人が賛成、85人が反対しました。 尹錫悦大統領は1月19日、内乱首謀の容疑で拘束されました。弾劾審判より刑事処分の手続きが先にはじまったのは、内乱・外患罪の場合は不訴追特権がないからです。 憲法裁判所は1月14日に弁論を開始しました。2月25日の第11回を最後に弁論を終結します。尹錫悦大統領は最終陳述を行う予定です。時間は無制限です。 どのようなことを語るのでしょうか。今までそうだったように、明白な事実を否定し、責任を部下に押し付けるという、くだらい姿を見せるのでしょうか。それとも態度をがらりと変え、堂々とした姿を見せるでしょうか。 チョ・ガプチェ氏をはじめとする保守勢力の一部は、尹錫悦大統領に「下野」を求めています。尹錫悦大統領は、そのような選択ができるでしょうか。 憲法裁判所は数回の評議を経て、3月中旬ごろに決定を言い渡すでしょう。今のところ、罷免は確実です。 3.予備選挙 2017年3月10日に朴槿恵大統領が罷免されたことを受け、各党はさっそく自党の大統領候補を選ぶ予備選挙に突入しました。共に民主党は文在寅前代表、アン・ヒジョン忠清南道知事、イ・ジェミョン城南(ソンナム)市長、チェ・ソン高陽(コヤン)市長の4人が予備選挙で争いました。湖南(ホナム=全羅道)、忠清、嶺南(ヨンナム=慶尚道)、首都圏での遊説と巡回投票を経て、4月3日に文在寅前代表が大統領候補に選出されました。 自由韓国党は3月31日の党大会で、ホン・ジュンピョ慶尚南道知事を大統領選候補に選出しました。ライバルはキム・ジンテ議員、イ・インジェ元最高委員、キム・グァニョン慶尚北道知事でした。3月31日は朴槿恵前大統領が拘束された日でした。 国民の党は4月4日、アン・チョルス元代表を大統領候補に選出しました。アン・チョルス元代表はソン・ハッキュ元代表、パク・チュソン国会副議長と競いました。 正しい政党は3月28日、ユ・スンミン議員を大統領候補に選出しました。ユ・スンミン議員はナム・ギョンピル京畿道知事を抑えての当選でした。 正義党は朴槿恵大統領が弾劾される前に、2月16日に大統領候補を選出していました。党員投票でシム・サンジョン代表がカン・サング元報道担当に勝利しました。 今回も、尹錫悦大統領が罷免されれば、各党は直ちに予備選挙に突入することになります。 民主党は異変がない限り、イ・ジェミョン代表が大統領選候補になるでしょう。キム・ギョンス、キム・ドンヨン、キム・ブギョムらの非主流派は「第3地帯」にイ・ジェミョン代表を引き入れて予備選挙を行うことも構想していますが、実現の可能性はなさそうに思われます。 国民の力はキム・ムンス、アン・チョルス、オ・セフン、ハン・ドンフン、ホン・ジュンピョらがしのぎを削っています。今は弾劾反対世論に乗っかったキム・ムンス雇用労働部長官が優勢です。弾劾後もそうかは分かりません。拡張の可能性に疑問を呈する人が多いからです。 4.大統領選挙 2017年、朴槿恵大統領が罷免されたことを受け、中央選管は直ちに大統領選の候補の受付を開始しました。3月15日の臨時国務会議でファン・ギョアン大統領権限代行首相は、5月9日を第19代大統領選挙の投票日に指定して公告しました。 選挙前の世論調査では、民主党の文在寅候補が常にリードを保っていました。選挙の結果、各候補の得票率は文在寅41.08%、ホン・ジュンピョ24.03%、アン・チョルス21.41%、ユ・スンミン6.76%、シム・サンジョン6.17%でした。 尹錫悦大統領が罷免されれば、チェ・サンモク大統領権限代行副首相兼企画財政部長官が選挙日を指定して公告するでしょう。 誰が当選するでしょうか。大統領選挙局面へと移った直後にあふれ出るはずの世論調査の数値が非常に重要です。60日は大勢を覆すには短いからです。 最近の世論調査におけるイ・ジェミョン代表の支持率は、国民の力の大統領候補たちでは相手になりません。大統領選候補としての適合度はもちろん、二者対決でもイ・ジェミョン代表が大きくリードしています。 今回の早期大統領選挙の勝敗を左右する変数は、民主党ではなく国民の力の側にあります。国民の力の候補たちが離脱することなく単一の予備選挙を行い、その結果に従うとともに、改革新党のイ・ジュンソク議員まで引き入れることができれば、終盤での逆転も期待できるでしょう。 イ・ジェミョン代表は2022年の3・9大統領選挙で1614万7738票を獲得しています。得票率は47.83%でした。歴代の大統領選挙の敗北者の中で最も多い得票数です。この票数を守るだけでも、イ・ジェミョン代表は高い確率で勝利するでしょう。 文在寅大統領は2012年の大統領選挙で1469万2632票を獲得し、得票率は48.02%でした。2017年の大統領選挙ではそれより少ない1342万3800票、得票率は41.08%でしたが、無難に当選しました。朴槿恵大統領の弾劾の影響で保守が分裂したからです。今回の大統領選挙はどうなるでしょうか。みなさんはどうお考えですか。 ソン・ハニョン|政治部先任記者 (お問い合わせ [email protected] )

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