1964年、東京オリンピックで、初めて正式競技に採用された柔道。時は流れ、昨年のパリ五輪では柔道人口が圧倒的に多いフランスの躍進に多くの人が目を奪われた。スポーツでありながら、武道であり、メンタルが大きく作用する格闘技。海外からも注目を集める人気スポーツである柔道の映画、ズバリ『TATAMI』。 スポ根映画と思ったら、これが柔道アクションの迫力はもちろん、実際に起きた「スポーツと政治」に絡んだ事件をベースにした緊迫感あふれるサスペンス。 ヴェネツィア国際映画祭では人権の尊重や多元主義を推し進める作品に与えられるブライアン賞を受賞。東京国際映画祭では審査委員特別賞および監督も務めたザーラ・アミールが最優秀女優賞に輝いている。 ■ 「イスラエルの選手と対戦する前に棄権せよ」 イラン代表の女子柔道選手レイラ・ホセイニはイラン初の金メダルを目指し、ジョージアの首都トビリシで行われる世界柔道選手権に挑む。女子柔道界の新星として期待されるレイラは60kg級のトーナメント戦に出場(現在導入されている女子柔道の階級で60kg級は存在しない)。 イスラム教の女性が着用するヒジャブで頭を覆いながらも快進撃を繰り広げ、故郷の家族、友人は大喜び。このまま行けば、決勝でイスラエルの選手と当たる。緊張と興奮。張り詰めたレイラにイラン政府は「怪我を装って棄権しろ」と要請する。 イスラエルを国と認めず、敵対的な声明を発しているイラン。イランのスポーツ選手は政府によって、イスラエルの選手と競技することを禁じられている。