刑事手続きのIT化法案を閣議決定 令状や訴訟記録を電子化

政府は28日、捜査や公判の刑事手続きをIT化する規定を盛り込んだ刑事訴訟法改正案を閣議決定した。捜査書類や令状、訴訟記録を電子化し、オンラインでやり取りできるようにする。デジタル化による手続きの迅速化や負担軽減が狙いで、政府は今国会での改正法成立を目指す。 現行の刑事手続きは、紙や対面でのやり取りを原則としている。逮捕や捜索に必要な令状は、警察官らが裁判所に捜査書類を持ち込んで請求し、発布された令状を捜査対象者に示しているが、裁判所への往復に時間や労力がかかっていた。 改正案は、令状をオンラインで裁判所に請求し、電子データで発付を受ける「電子令状」を規定した。警察官らがオンラインで捜査書類を裁判所に送り、受け取った電子令状を手元のタブレット端末に示して執行することが可能になる。裁判所に出向く手間が省け、速やかな捜査の着手が期待できる。 供述調書をはじめとした捜査書類も電子データ化される。現在は弁護人が紙媒体で複写する必要があり多大なコスト負担になっていたが、データで受け取れるようになる。令状に基づき、電子データの保管者にデータをオンラインで提出させる、罰則付きの「電磁的記録提供命令」も創設する。 また、法廷と別の場所を映像と音声でつなぐビデオリンク方式の対象も広げる。被告が病気や障害で出廷が困難だったり、出廷に伴って危害を加えられる恐れがあったりする場合に限定して、被告の遠隔出廷が可能になる。 証人尋問のビデオリンク方式はこれまでの性犯罪被害者らに加えて、病気や移動が難しい証人も対象に含める。被害者参加制度でも利用できるようにする。 刑訴法に加えて刑法も改正し、SNS(ネット交流サービス)で著名人になりすまして虚偽投稿するような問題に対応するため、電子データを対象にした文書偽造罪を定める。【三上健太郎】

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