カフェの業務用コンセントを無断で使ったら…刑法第245条「電気は財物とみなす」 1円以下の電気窃盗で書類送検されたケースも

ある日の午後、営業職のAさんは重要な商談の電話中に突然のピンチに見舞われました。スマートフォンのバッテリー残量が急激に減少し、あと数分で切れそうな状況に陥ったのです。焦ったAさんは、目の前に見えたカフェに飛び込みました。 席に着くなり、Aさんは慌ててコンセントを探しましたが、壁面には見当たりません。足元を見るとコンセントを発見し、安堵のため息をつきながら急いでスマートフォンを充電し始めました。 商談を続けながらAさんは胸をなでおろします。しかしその安堵感もつかの間、注文を聞きに来た店員に充電していることを指摘されてしまいます。「申し訳ありませんが、店内での充電はご遠慮いただいております」と丁寧ながらも断固とした口調で告げられたのです。 しかしAさんとしては、重要な商談中という特別な事情もあったため、何とか許可してもらえないかと店員に懇願しました。しかし店の方針は変わりません。 仕方なく充電を中断したAさんですが、モヤモヤした気持ちは収まりません。Aさんがもしもこのような場合に無許可でスマートフォンを充電したら、何かしら罪に問われるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。 ーカフェのコンセントを無断使用したら罪になりますか? カフェのコンセントを無断で使用すると、法律上「窃盗罪」に問われる可能性があります。刑法第245条では「電気は財物とみなす」と定められており、店舗の許可なくコンセントを使用する行為は電気の窃盗とみなされるためです。 一方で、テーブル席の目立つ位置にコンセントがある場合は、客用に設置されたものとして解釈される場合があり、窃盗罪が成立しないケースもあります。ただしAさんの場合は足元にあったコンセントのため、業務用コンセントと判断される可能性が高く、無断使用はリスクが高いです。 ー実際に盗電で捕まったケースはありますか カフェの事例ではないものの、コンビニのコンセントを無断で使用して携帯電話の充電をしていた中学生が窃盗容疑で書類送検された事例があります。充電に使用された電力は電気代に換算すると1円以下ではあるものの、ほかにも同じような事例で書類送検されるケースは存在します。 また駅構内のコンセントを無断で使用していたとして大学生が窃盗容疑で摘発されたケースもあります。こちらは電気代が3銭以下であったことと、本人が反省していたため書類送検もしない「微罪処分」として処理されました。 ー金額が少なければ起訴されることはないのでしょうか 金額が少ないからといって書類送検で済むとは限りません。2010年にはアパートの共用コンセントを使って2円50銭相当の電気を盗んだとして、大阪地裁が被告に懲役1年(執行猶予3年)の刑を言い渡した事例があります。金額だけでなく行為の悪質さ、態様等も考慮して立件されるのだと考えます。 Aさんの場合、店員からの注意を受けて謝罪し充電をやめれば逮捕される可能性は少ないと考えます。ただ何度も注意を受けてもやめなかったり、店員に対して悪態をつくなどすれば店から警察に連絡がいく場合もあるので注意が必要です。 ◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。 (まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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