逮捕された生徒との接し方に悩む 被害生徒が事件前に学校へ相談 福山通信制高校刺傷事件、28日で発生1週間

広島県福山市三之丸町の通信制「おおぞら高校」福山キャンパスで女子生徒3人が刺傷された事件は28日、発生から1週間となる。凶器を準備して校内で同級生らを襲う事件が全国で相次ぐ中、同市の女子生徒(17)=殺人未遂容疑で送検=は果物ナイフを持ち込んだとされ、対応の難しさがあらためて浮かび上がった。専門家は悩みに寄り添う相談体制の拡充など、ソフト面の対策の必要性を指摘する。 事件は21日午前10時15分ごろに発生。広島県警などによると、生徒は休憩時間中、同じ教室にいた3人を背後から突然ナイフで刺した。生徒は逮捕後の調べに「学校内の人間関係のもつれがあった」という趣旨の供述をし、被害者側も「逮捕された生徒との距離感や接し方に悩みがある」などと事件前に学校側に相談していた。 県警は生徒がナイフを事前に用意し、犯行を計画していた可能性があるとみている。防犯対策として普段から職員がキャンパス周辺を巡回し、警察官の講習も開いていたという同高。だが、担当者は「生徒が凶器を持ち込む想定はなかった」と明かす。 国は2001年の大阪教育大付属池田小事件を機に、学校の外部からの不審者侵入対策を強化した。09年には学校保健安全法が施行され、公私立や通信制を問わず各学校に危機管理マニュアル作りや防犯訓練が義務付けられた。 広島県教委は、各校の安全担当者を集めた研修で全国の学校で起きた不審者の侵入例を共有。福山市教委は年1回の不審者対応訓練を小中学校に求め、教諭が通報や刺股の使い方の練習をする。 一方、近年多発しているのが、生徒や学生同士で起きる事件だ。21年11月、愛知県弥富市の市立中で包丁を持参した男子生徒が同級生を刺して殺害。広島市の市立中で23年3月、男子生徒が自宅から持ち込んだ包丁で同級生を切り付けた事件では、果物ナイフやカッターナイフも持っていたとされる。 今年1月には東京都町田市の法政大多摩キャンパスで女子学生がハンマーを振り回し、8人が負傷した。文部科学省の担当者は「日々の指導で防ぐべきで、荷物を調べるような指針を統一的に示すのは難しい」と対策に頭を悩ませる。

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