「いろんな男とやれよ」被害者が語った映画監督・榊英雄被告の言葉と暴力によるマインドコントロール

映画監督の立場を利用し20代の女優にわいせつな行為をしたとして、準強姦罪に問われている映画監督の榊英雄被告(54)の公判が2月21日、東京地裁で開かれた。被害女性の証人尋問が行われ、榊被告の言葉と暴力による恐怖のマインドコントロールの実態が語られた。 昨年10月に、’16年に20代の女優Aさんにわいせつな行為をしたとして準強姦罪に問われた公判が開かれている。 その他にも、 ’15年3月19日には、演技指導をするなどと言ってマンションの一室で女優Bさんに性的暴行を加えた。’16年には女優Cさんを食事に誘い、 「これから俳優としてやっていく覚悟があれば何でもやれるよな。じゃあパンツを脱げ」 と指示。その後ホテルに誘い、性行為に及んでいる。 法廷に現れた榊被告はモスグリーンのセットアップ姿で、女性弁護士に軽く会釈。落ち着いた様子だった。 この日は、検察と榊被告の弁護士、裁判官がCさんに質問をし、これにCさんが答えるという流れで裁判は進められた。以下、Cさんが語った榊被告との出会いから事件が起きるまでの具体的内容である。(編集部注:今回の公判は、Cさんの証人尋問ということであり、以下にある榊被告のコメントに関しても、Cさんが語ったものである) 証人尋問に出廷したCさんは、榊被告と同じ空間にいることが耐えられなかったのか、別室からリモートでの証言となった。検察官から、「榊被告から何回被害に遭いましたか?」と問われるとCさんは、 「7、8回ぐらいあったかと思います」 と答えた。 ◆誘われた居酒屋で豹変 榊被告との出会いは’16年7月。榊被告が監督を務めるドラマの撮影現場だった。Cさんはエキストラの大学生役で出演。榊被告が撮影中に台本にないシーンを追加するため「誰かスカートをめくられる役をやってくれないか?」とエキストラに呼びかけた。Cさんは「ここで手を挙げれば、監督に覚えてもらえる」と思い、自ら名乗り出てスカートをめくられる役を演じた。その日のうちにツイッター(現X)で榊被告に、《ありがとうございました》とメッセージを送った。 すると、榊被告から《無理を言って悪かったね。お礼に食事をごちそうさせてください》と返事がきたという。現場での榊被告の印象についてCさんは、 「現場ではスタッフに明るく接し、エキストラに対しても1人の役者として見てくれている」 と好印象を抱いたと語っている。それからおよそ10日後に渋谷の居酒屋で2人きりで食事をすることになった。当時Cさんは芸能事務所に所属していたが、大きな役はもらえずエキストラとしてCMやドラマに出演。俳優として売れないと悩んでいると打ち明けたとき、榊被告が共感してくれたことがうれしく涙を流したという。そして榊被告から、 「売れるためには作品に出続けなければいけない。そのためには出してくれる人が必要。俺が協力できるかもしれない」 といった言葉をかけられたという。しかし、ここから榊被告の態度が豹変。〝裏の顔〟を見せ始める。榊被告は、 「お前なんでもやれる覚悟はあるのか? 覚悟があるならパンツを脱いで来い」 とCさんに指示。Cさんはトイレでパンツを脱ぎ、席に戻る。すると榊被告は、 「(パンツを)よこせ」 と言い、匂いを嗅ぎ自身のポケットにしまう。そして「行くぞ」と言われ、ホテルに移動。ホテルの前まで来た時点でCさんに迷いはあったものの、 「覚悟がありますと言った手前、行くしかない状態でした」 と断ることはできなかったという。部屋に入り榊被告にキスをされたときには、 「この先、何が起こるんだろう、と……。不安と後悔が出てきました……」 と語った。その証言の途中では嗚咽が漏れ、言葉が途切れる場面もあった。 その後も、当時の現場を再現した証言は続く。そんな不安のなかホテルの部屋に入ると、突然、頬に鋭い衝撃が走ったという。 「耳の痛みと意識が飛ぶような感覚でした」 その理由は、榊被告から平手で3発殴られたためだ。Cさんは完全に抵抗する気力を失ってしまう。されるがままに行為が始まり、行為中も榊被告から、 「何人と付き合った?」「初体験はいつ?」「どんなプレーをした?」 と質問責めにされ「お尻の穴に指を突っ込まれた」などと証言。サディスティックな言動にCさんは、 「人間としての尊厳を失われたような感覚でした」 と振り返った。行為を終えると榊被告は有名な女優たちの名前を挙げ、 「みんなこういうことをやっているんだ。お前も頑張らないとな」 と言ったという。そのときのCさんの心情は、 「耐えなきゃいけないんだな」 と女優として売れるためには仕方のないことと自分を納得させたという。そして、Cさんは徐々に、榊被告のマインドコントロール下に置かれてしまう。 ◆「私と同じ目にあってほしい」 その後も、榊被告からメールで《今日、〇〇に来い》と度々呼び出され、関係を持つようになった。榊被告は有名な芸能事務所の名前を出して、 「あそこは枕要員がたくさんいる。お前はいい子だから枕要員になれよ。俺がプロデューサーとか連れてくるからいろんな男とやれよ」 と持ちかけることもあった。不特定多数の男性と関係を持たされることに恐怖を抱いたCさんが「監督だけがいいです」と伝えると榊被告は、 「じゃあお前は俺の肉便器だな」 と侮蔑的な言葉を浴びせた──。 なぜここまでの主従関係が出来上がってしまったのだろうか。Cさんは、こう答えている。 「女優としての力量を試されているような感覚があった。監督の求めることに応じなければいけない上下関係があった」 ’22年冬に榊被告の女性問題が週刊誌に報じられたことで、榊被告からの連絡は途絶えたという。 ’24年に逮捕された榊被告の自宅から押収されたSDカードには、女性の裸が保存されており、その中にはCさんが映っているものもあったという。そしてCさんは、警察から本人であると確認されたことをきっかけに被害届を出すに至った。被害届を出すのが遅くなった理由について問われたCさんは、 「酷いことをされたとは思っていたが被害者とは思えなかった。不安と逃げたい気持ちを悟られないように被告人と接していた。私が悪いんじゃないかと自分を責めていました」 と説明している。Cさんは、事件の後遺症から現在、カウンセリング治療を受けており、 「被告人のことがずっと怖かったんです。(時間が経過した後に)被告人の記事を見たときに恐怖で震え上がってしまった。被告人は私の表情を見て観察していたんだと思います。私が恐怖に感じることをずっと与えてきた。それに耐えれば耐えるほどどんどん支配されていく感覚があった。それは今もずっと続いている」 と言葉を震わせた。 最後に榊被告に言いたいことを問われると、 「口にしてはいけないのではないかと悩んでいますが、被告人の愛する娘さん、元奥さん、お母さまとか大切な人に私と同じ目にあってほしいと思っています」 と言葉を絞り出した。Cさんの証言中、ノートにメモを取ったり、目を閉じるなどしていた榊被告。今も続くCさんの苦しみをどう受け取ったのか、その表情からは何も読み取れなかった──。

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