マンハッタン地区検事局、悪名高きディーラーなどから押収した118点の遺物をイタリアとギリシャに返還

マンハッタン地区検事局は、紀元前1300年から1200年頃に作られた奉納用の人形や紀元前4〜3世紀の大理石製の葬祭レリーフをはじめとする古代ギリシャの遺物11点をギリシャに返還したと発表、2月25日に返還式が開催された。11点の中にはほかにも、ヘレニズム期に作られたギリシャ神話に登場する英雄、アタランテの像や、紀元前600〜500年の戦闘場面が描かれた陶器、そして豊穣の神であるディオニュソスが描かれたカンタロスなどが含まれていた。 これらの遺物はマンハッタン地区検事局によって押収されたもので、アテネのカシメリニ紙によれば、その価値は総額でおよそ100万ドル(約1億5000万円)にも上るという。 マンハッタン地区検事局はその一週間前となる2月18日にも、総額120万ドル(約1億8000万円)、合計107点の美術品をイタリアに返還したと発表。紀元前6世紀中頃に作られたテラコッタ製のカイリクスや紀元前320年から310年頃のプッリャ式渦形クレテル、紀元前4世紀に使われていた青銅でできた皿などを含むこれらの美術品は、ジャコモ・メディチやジョバンニ・フランコ・ベッキナ、ロバート・ヘクトなど、悪名高いアートブローカーが入手したものだ。 カイリクスと呼ばれるゴブレットは、エトルリアのヴルチ遺跡から違法に発掘されたのち、1960年代にニューヨークとパリを拠点とするディーラー、ロバート・ヘクトによってイタリア国外に持ち出された。その後、2017年からマンハッタン地区検事局の古遺物密売部門(ATU)によって押収されるまで、カイリクスはメトロポリタン美術館が所蔵していた。 ギリシャの南イタリア植民地で焼成されたテラコッタの壺であるクレテルは、1987年以前に古美術ディーラーのエドアルド・アルマジアによってニューヨークに密輸され、マンハッタンのギャラリーに売却された。ATUはこの壺を個人コレクションから2024年に回収した。マンハッタン地区検事局が発表した声明によれば、アルマジアは起訴され、逮捕状が出されているという。 青銅製の皿は、有罪判決を受けた古代美術品密輸犯のジャンフランコ・ベッキナによってイタリアから密輸され、ニューヨークを拠点とする古代美術品ディーラーのマティアス・コモールの手に渡ったあと何者かに売却され、今年初めにATUに押収された。 ほかにも、メトロポリタン美術館が所蔵品の出自を内部調査した結果、7世紀に作られたブロンズ製頭部を寄贈者である元理事長に返還することが決まっている。同館の研究者は、1930年代にオリンピア考古学博物館から違法に持ち出された可能性が高いと結論づけたが、誰によって持ち出されたかなどの詳細は不明だという。(翻訳:編集部)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加