ミャンマー国民が「茶番」と語る特殊詐欺拠点からの救出劇 寝返り、賄賂…悪評つきまとう国境警備隊

タイとミャンマー国境のミャンマー側の中国系特殊詐欺集団の拠点で、詐欺を強要されていたさまざまな国籍の人々の救出が続いている。報道によると、保護された人の国籍は28カ国におよび、7000人を超えている。外国人を保護し、タイ側に送り返しているのは、ミャンマーの少数民族武装勢力「カレン国境警備隊(BGF)」だ。ただ、この組織についてはさまざまな疑念の目が向けられている。なぜミャンマーにこれほどまでの詐欺拠点ができたのか。国境警備隊とはどんな組織なのか。ミャンマー情勢に詳しい旅行作家の下川裕治氏が取材した。 * * * ミャンマー国境で起きている特殊詐欺集団の報道は、ネットメディアなどを通じて、ミャンマーにも連日、伝えられている。ただ、自国で起きていることなのだが、ミャンマー人の反応は冷淡だ。 ヤンゴンでレストランを営むMさん(62)はこう話す。 「私たちは入れないエリア。そもそも治安が悪くて、タイ国境付近には行けない。それに国境警備隊がやっていることでしょ?」 ■詐欺で稼いだカネが国境警備隊を通じて国軍に 雑貨店を営むSさん(48)はZoomを通してこう話してくれた。 「茶番ですよ。国境警備隊の自作自演。ニュースを見る気にもなれない」 反国軍系のネットメディア「イラワジ」は、国境警備隊を率いるソーチットゥー大佐を、「悪名高い軍閥のリーダー」と書いている。保護された外国人を受け入れるタイ政府も、ソーチットゥー大佐を含む国境警備隊のリーダー3人の逮捕状を取る動きが出ている。 武装勢力の国境警備隊とはどんな組織なのか──。 ミャンマー人は、国軍傘下のこの組織が、中国系マフィアと手を組み、特殊詐欺の拠点を管理しているとみている。ミャンマー東部のシュエコッコーなど、国境付近に数十カ所ある特殊詐欺拠点が生む金は年間2億ドルともいわれ、その半分が国境警備隊を通してミャンマー国軍に流れていたとされる。日本円にすると150億円にもなる。国軍の弾圧に苦しむミャンマーの人々が吐き捨てるようにいうのも当然だ。

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