伊藤詩織「Black Box Diaries」問題、性被害者支援の観点から懸念されること

内閣府男女共同参画局の男女共同参画白書(令和6年版)によれば、2023年の調査で「不同意性交等の被害にあった経験」があったと答えたのは女性が8.1%、男性が0.7%。そのうち「誰にも相談できなかった」と言う女性は55%に及ぶ。 性暴力は密室の中で起こる可能性が高いからこそ、証明をするのも難しいし、伊藤詩織さんが顔と名前を出して告発したときの誹謗中傷の嵐を見ても分かるように、風当たりがとても強い。 近年日本で起こる性暴力事件でも、罪を認めていた被告が一転無罪を主張し始めたり、加害者側の言葉が「卑猥な言葉との範疇」で脅迫にはあたらないとして無罪となったりと、「性暴力をきちんと認めさせることの難しさ」を我々は目の当たりにしている。伊藤さんが2015年に受けた性暴力について民事訴訟を起こし、勝訴を勝ち取ったのは、重要な一例でもあり、伊藤さん本人と弁護団をはじめとする支援者たちの熱意によるものだといえよう。 今回、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされ、海外で多くの映画賞を受賞している『Black Box Diaries(以下、BBD)』は、性被害がどのように扱われているかを明確に示すものでもある。だがいま日本で公開できない理由の「問題」とされているのは、そういう内容のことではない。あくまでも「無許可で使用されている映像が多くある」ことだ。 問題が発覚したとされる2024年7月の試写会を企画した浜田敬子さんと、裁判をすべて傍聴してきた小川たまかさん、ジェンダーと教育やメディアの問題を研究している中野円佳さんによる鼎談の前編では、「何が起きたのか」「何が問題とされたのか」を改めてお伝えした。 後編では、「問題」とされることによる影響を考える。

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