和歌山県広川町の海で2020年、男性2人に入水するようにそそのかしたとして、大阪府警は11日、自称占師の浜田淑恵容疑者(62)=大阪府河内長野市=ら2人を自殺教唆容疑で逮捕し、発表した。府警は、浜田容疑者がカウンセリングを通じて知り合った2人を信じ込ませ、支配下に置いたとみている。 捜査1課によると、男性2人は50代と60代の知人同士で、20年8月1日、広川町の海岸で、マイクコードでお互いの手首を縛った状態で遺体で見つかった。 浜田容疑者らの逮捕容疑は、2人に「命を捨てて関係者から悪いものを取り除く」という趣旨の文言を伝え、20年8月1日に広川町の海に入水させ、自殺をそそのかしたというもの。府警は2人の認否を明らかにしていない。 府警によると、司法解剖の結果、2人の死因は溺死(できし)で、当初の捜査を担った和歌山県警は事件性はないと判断していた。 昨年5月、浜田容疑者の占いを受けた後に恐喝されたという大阪市の男性が府警に被害を相談した際、浜田容疑者が2人の死に関与した疑いがあると府警に説明したという。府警が県警に問い合わせると2人の死亡事案が確認され、府警が捜査を始めた。 ■自らを「創造主」 8千万円恐喝罪で起訴 府警は今年1月28日、浜田容疑者と、浜田容疑者の信奉者の女(59)=東京都中野区=ら3人を大阪市の男性に対する恐喝容疑で逮捕。浜田容疑者は自身を「創造主」と主張し、「全財産を捧げろ」などと計約8千万円を脅し取った恐喝罪で今月11日、起訴された。 取り調べの中で浜田容疑者は、2人の死亡について女と一緒に海に行き、「4人で死ぬ計画を立て海に入った」と供述。女は「死亡した2人を岸まで運んだ。(浜田容疑者に)言われたら従わなければならない」と話したという。府警は浜田容疑者がこの女ら3人を信じ込ませ、指示に従うよう迫っていたとみている。 府警によると、死亡した2人は08年ごろ、浜田容疑者のホームページを見てカウンセリングを通して知り合い、心酔していったという。60代男性は自らの給料や、両親から相続した不動産を売却して得た金などを浜田容疑者に渡していたことも判明した。府警は、浜田容疑者が死亡した2人を支配下に置き金銭の提供を受けていたとみている。 当初の捜査について和歌山県警は朝日新聞の取材に対し、「事案認知後、必要な捜査を行っており、適切であったと判断している」とコメントした。 浜田容疑者は自殺教唆容疑のほか、別の女(47)=大阪府河内長野市=と共謀し、60代男性の死亡への関与を隠すために男性名義の遺書を偽造して和歌山県警に提出したなどとして、有印私文書偽造・同行使容疑でも逮捕された。浜田容疑者は恐喝事件についての府警の調べの中で、「関与をカムフラージュし、勝手に自殺したように見える文書を作成した」と話したという。(田添聖史、宮坂知樹)