「静かにしろ」 2009年10月の夜、ドラッグストアの店長に包丁を向けて脅し、金を要求するも、抵抗されて逃走した2人組の男。 男らはそれから約15年後、時効直前に逮捕され、そのうち主犯格の男が法廷に立った。 強盗傷害の罪に問われたのは、40歳の無職の男。 男は2009年10月22日、知人と共謀の上、静岡県長泉町のドラッグストアで、金品を奪う目的で店長を包丁で脅したものの抵抗されたため、何も取らずに逃走。 抵抗の際に包丁を掴んだ店長の手に、後遺症が残るけがをさせた罪に問われていた。 事件から15年以上の時を経て証言台に立った男は「間違いありません」とはっきりとした口調で起訴内容を認めた。 続く冒頭陳述で、検察側は「高級な外車と音楽機材を購入するなどして消費者金融に借金があり、金に困っていた」などと指摘。 弁護側は「事実関係に争いはない」とした上で「被害者から反抗を受けてから犯行を途中で止めている」などとして、情状酌量の余地はあると主張した。 15年以上の時を経て開かれた裁判。 犯人逮捕のきっかけは、現場近くに残されていた「片方の軍手」だった。 軍手の内側から採取したDNAを、時効前の2024年に照合したところ、強盗傷害事件後に道路交通法違反の疑いで逮捕された男のDNAと一致し、逮捕に至ったという。 被告人質問で再び証言台に立った男は「15年が時効だと分かっていた」と話し、裁判官に「自首しようと思わなかったか」と問われた際には「考えはしたが、行動には移せなかった」と証言した。 2025年3月13日、静岡地裁沼津支部で開かれた判決公判。 裁判長は「閉店後の夜間、1人で店舗から出てきた被害者を押さえつけて店舗のバックヤードに押し込み、包丁を突き付けて脅迫した行為は多大な恐怖を感じさせる悪質な犯行。他方で、被害者に積極的にけがを負わせる意図はなく、抵抗されてすぐに犯行を断念した点は考慮すべき事情」などと認定。 検察側の懲役7年の求刑に対し、懲役6年の実刑判決を言い渡した。