人権外交を超党派で考える議員連盟は12日、トランプ米大統領が発令した国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)職員に制裁を科す大統領令を巡って、国会内で総会を開いた。政府に対し、「法の支配の砦たるICCへの強い支持を具体的な支援を打ち出すべき」と要請し、制裁措置の撤回を求める声明文をまとめた。近く政府に提出する。 ■制裁対象拡大が危惧 政府に対する声明文は①米国に発令撤回を要請②具体的支援としてICCへ分担金の早期支払い③ICC日本事務所構想の実現の後押しーを求めている。 ICCは、ジェノサイドや戦争犯罪などに対応する国際刑事裁判所で、2002年に発効したICCローマ規程によって設立された。昨年11月、戦争犯罪と人道に対する罪の疑いでイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を発行したが、トランプ氏の反発を招き、2月6日、同大統領令が発令された。ICCのカーン主任検察官が制裁対象に指定されており、対象拡大が危惧されているという。 制裁が科されたICC関係者は、米国入国や米国内の資産処分が困難になることに加え、域外適用で世界中のほぼすべての金融機関の使用が困難になるとされる。ICC自体が制裁対象となれば、地域事務所の運営や業務の遂行維持が極めて困難となる。 ■弱肉強食の社会に 人権外交議連は声明でICCについて「国際社会における法の支配の最後の砦ともいうべき」と指摘し、制裁措置によって「非人道的な重大犯罪に対する不処罰のリスクは高まり、人類が積み上げてきた国際社会の秩序は壊れ、法の支配は力の支配へと移行し、弱肉強食の社会が立ち現れる」と危惧した。 同大統領令についてICC加盟の125カ国のうち79カ国が非難声明を出したが、日本は見送っている。(奥原慎平)