第48回日本アカデミー賞の授賞式が3月14日、東京・グランドプリンスホテル新高輪の国際館パミールで行われ、「正体」の吉岡里帆が最優秀助演女優賞に輝いた。 本作は、藤井道人監督(「新聞記者」)が、染井為人氏の同名ベストセラー小説を映画化したサスペンスドラマ。日本中を震撼させた凶悪な殺人事件を起こして逮捕され、死刑判決を受けた鏑木慶一(横浜流星)が脱走した。鏑木を追う刑事・又貫征吾(山田孝之)は、逃走を続ける鏑木が潜伏先で出会った人々を取り調べる。しかし彼らが語る鏑木は、それぞれが全く別人のような人物像だった。さまざまな場所で潜伏生活を送り、姿や顔を変えながら、間一髪の逃走を繰り返す鏑木。やがて彼が必死に逃亡を続ける真の目的が明らかになり……。 吉岡は、メディア企業の編集部で働いており、フリーランスのライターとしてやってきた鏑木の仕事に対する姿勢に好感を持ち、積極的に仕事を頼むようになる安藤沙耶香を演じた。これまで第43回で新人俳優賞、第46回で優秀主演女優賞(「ハケンアニメ!」)を獲得しており、最優秀助演女優賞は初受賞となった。なお吉岡は、日本能登半島地震からの復興を祈念した舞台に出演中のため、リモート参加となった。 受賞前、吉岡は役どころについて、「私が演じた安藤沙耶香という女性は、横浜さん演じる鏑木慶一にとって希望の光になるべき存在でした。男女の恋愛感情を超えた、一対一の人間としての信頼関係や絆が映像に映るように、大切に演じました」と語っていた。 吉岡の代理で藤井監督が、昨年の第47回で最優秀助演女優賞を受賞した安藤サクラ(「ゴジラ-1.0」)からブロンズを受け取った。リモートで吉岡は、「ごめんなさい、本当にびっくりし過ぎちゃって……ありがとうございます、とても嬉しいです」と胸に手を当て、驚きを隠せない様子ながら、言葉を紡いだ。 吉岡「この作品は人生において、とてもとても重要な作品になりました。自分がこの世界に入りたいと思ったきっかけが、エキストラで映画に出させていただいたことです。本当に多くのスタッフの方、キャストの方が力を合わせて撮影されている映画の現場を見た、その感動に引き寄せられて、『この仕事をしたい』と思いました。今回の『正体』のチーム全員のように、心から良い作品を作りたいと一致団結して、すごいパワーを発揮する映画というものに、自分も携わっていきたいですし、見る側としても本当に大事なものだと思っています」 石川県能登半島・七尾市からスピーチを披露した吉岡。最後に「遠く離れていたとしても、映像はその場所、その場所に、時代を超えてエネルギーを残していくものだと思っています。少しでも見ていただける方のパワーになるように、これからも精進していきたいと思っています」といい、「藤井組に出会えて、私は幸せです。本当にありがとうございました」と、充実した表情で締めくくった。 会場でその姿を見守っていた藤井監督は、「本当におめでとうございます。この役で吉岡さんに出会えて、僕も非常に幸せ者だと思っております。これからも一緒に面白い作品を作っていきましょう」と、感謝の言葉を伝えていた。 なお、優秀助演女優賞は、芦田愛菜(「はたらく細胞」)、清原果耶(「碁盤斬り」)、土屋太鳳(「八犬伝」)、山田杏奈(「正体」)が受賞した。