全国の労働局が2月28日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数が、2020年4月から累計1,620件に達したことがわかった。不正受給総額は530億352万円にのぼる。 2024年(1-12月)は625件で、前年(692件)を67件下回った。2025年も1月は35件と3カ月ぶりに40件を下回り、2月も40件で前年平均52.0件を下回って推移している。コロナ禍も5年を経過し、不正受給の公表がこのまま落ち着くか注目される。 2025年2月の公表は40件にとどまったが、同月25日に公表された結婚式場運営のアルカディア(株)(TSRコード:930096622、福岡県)は、不正受給金額が10億1,896万円で歴代3位だった。この不正受給により元社長ら8人が詐欺容疑で逮捕され、2月25日に事業を停止し破産準備に入った。突然の事業停止により、挙式を予定していたカップルの混乱が大きく報道された。 雇調金等の不正受給が公表された企業のうち、倒産が判明したのは92件に及ぶ。倒産の発生率は5.6%と高水準だが、不正受給金額の返還や公表による取引先や金融機関の信用失墜から事業断念に追い込まれるケースが今後も出てくるとみられる。 コロナ禍では、雇用維持を支える雇調金を迅速に支給するため、手続きを簡素化した特例措置が講じられた。しかし、特例措置を狙った不正受給の発覚も後を絶たない。 不正受給は、明白なコンプライアンス(法令順守)違反で、公表されると取引先や金融機関の信用を失うと同時に、違約金と延滞金を加えた支給金額返還を迫られる。本来の目的を逆手に取った不正受給の追及は、今後も続く。 ※本調査は、雇用調整助成金、または緊急雇用安定助成金を不正に受給したとして、各都道府県の労働局が2025年2月28日までに公表した企業を集計、分析した。前回調査は1月22日発表。