楽天モバイルとの取引で急成長 業績が2年で3倍になった運送会社は、なぜ不正取引と資金還流に手を染めたのか?

中小・零細企業の倒産が増加している。コロナ対策として実施された金融支援の縮小・終了により資金繰りが悪化し、さらに物価高や円安といった市場環境の変化も重なり、取引先が予期せず経営破綻するケースが相次いでいる。大企業にとっても、こうしたリスクの兆候を見逃さないことが重要だ。本連載では『なぜ倒産 運命の分かれ道』(帝国データバンク情報統括部/講談社)から内容の一部を抜粋・再編集。大企業と取引のあった2社の事例から浮かび上がる“倒産のリアル”に迫る。 今回は、楽天モバイルを舞台にした巨額詐欺事件で破産した運送会社を取り上げ、資金還流のカラクリを解説する。 ■ 楽天モバイルへの水増し請求発覚で破産、刑事事件に ■ 2023年3月29日破産手続き開始決定 楽天モバイルを舞台とした巨額詐欺――。同社の携帯電話基地局の整備に関する詐欺事件は、業界内外を騒然とさせた。本事件に関与した株式会社TRAILについて、破産手続き開始決定後の2023年8月22日に第1回債権者集会が開催された。 ■「TRAILはビクともしない」 TRAILの動きに不穏なところはないか――。 問い合わせが寄せられたのは2022年8月下旬のこと。その時点では、何が起きているのか判然としなかったが、尋常ではない業績の急伸ぶりは確かに引っ掛かった。そう思ったのもつかの間、事態は急展開を迎えた。 同年8月30日、主要取引先の日本ロジステック株式会社(東京都千代田区、以下、日本ロジ社)が東京地裁へ民事再生法の適用を申請したのだ。同社の業績もまた急伸していたが、両社ともに楽天モバイル株式会社からの受注が大きく伸びている点で共通していた。公表されていた日本ロジ社の2022年3月期の決算書の負債額は約75億円であったが、民事再生法申請時の負債額は約151億円に倍増していた。 もはや不審な空気しか感じられない。早速、帝国データバンクの担当調査員がTRAILに連絡したところ、「日本ロジ社が倒産してもTRAILはビクともしない」とコメントしたという。しかし、この時点ですでにTRAILの資金繰りは破綻状態にあった。

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